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心身に悪影響を及ぼす孤独への対応・つながりの大切さについて

 自治会の加入率がどんどんと減っていく。

 地域のつながりがどんどんと失われていく。

 

 最近のこの傾向は、時代の流れであり、もはや、やむをえないことかと一時考えていました。

 

 しかしながら、それは違うようです。

 

 孤独・孤立は防いでいかなければならないのです。

 

Ⅰ 孤立・孤独のヒトへの悪影響について

 2021年2月19日、菅内閣において孤独・孤立対策担当室、孤独担当大臣が任命されたということが大きな話題となっています。内閣府において【記者会見】が行われています。

 

 ある記事【東京新聞参考記事】によると「コロナ禍で、孤独や孤立に起因していると見られる問題が深刻化。昨年の自殺者数は2万1077人(暫定値)と11年ぶりに増加に転じた。厚労省が自殺者の原因・動機となった問題を分析したところ、「孤独感」は434人(同)で前年比31.5%増だった。文科省の調査では昨年の小中高校生の自殺者は前年比41.3%増の479人で過去最多だった。」と記載されています。

 また、イギリスでは2018年1月17日に孤独担当大臣が任命されています。【BBC参考記事

 参考記事によると、「『孤独委員会』での2017年報告では孤独は1日たばこを15本吸うと同じくらい、健康に害を与えると、指摘している。」と記載されています。

 

 この事は、孤立・孤独というものが、人間の心理面において非常に大きな悪影響を及ぼし、そして身体的な負の影響につながっているという事実を示すものです。

 他にも多くの資料で、その内容が挙げられているので、抜粋してみます。

 【フォーブス孤独がメンタルヘルスに及ぼす7つの影響】によれば、孤独は「炎症を起こす」、「うつ病と関連」、「認知症リスク」などが挙げられています。

 また論文【孤独に関する医学的研究と人間の孤独性】によれば、「孤独は心身の様々な疾患のリスクファクタ ーであり、特に死亡率にも関与することを科学研究が明らかにしている。また、孤独はわれわれの脳機能とも関わることが示唆されており、孤独においては身体的苦痛を感じる脳領域が活性化し、関係性の再構築が行われると報酬系が活性化することが報告されている。」とあります。

 なお孤独に対する対策も記載されており、「『社会的サポートを強化する』『社会的交流の機会を増やす』などの社会的孤立を防ぐ取り組みは関係性の再構築 を目指すものであり、予防医学的観点からも極めて重要であると考えられる。(もちろん対象者は高齢者に限らない)」というものです。

 

 上記のように、他にも多くの研究によって、孤立・孤独での人間への悪影響は明らかとなっており、孤立・孤独を解消する取り組みが、個人並び社会に求められるのです。

 

Ⅱ 孤立によるDVや児童虐待への影響について

 孤立家庭は、児童虐待やDVの傾向が高いという実態が「厚生労働省資料」で明らかとなっています。

 例えば、児童虐待の件で、厚生労働省の2018年の資料では、地域との接触はほとんどないと答えた人は、そうでない人に比べて虐待傾向が高いということが記載されています。

 参考記事「児童虐待死、母もDV被害 家庭の7割は社会で孤立

     「児童虐待増加、孤立防ぐ手だて続けよ

 孤立・孤独というものは個人だけでなく、家庭も同様に生じます。

 社会における家庭の孤立・孤独は個人を蝕むだけでなく、身内への攻撃につながる可能性が現実として高いのです。

 児童虐待については2018年6月議会で取り上げています。

 ●2018年6月議会【児童虐待防止のための地域共育による孤立家庭防止施策について

 

Ⅲ つながりの大切さについて

 人間は社会を築くことによって、繁栄してきました。人とのつながりの中で生きてきたといえます。

 そのため、他者と接しないことで精神的不安を感じ、その精神的不安は心身に悪影響を及ぼす。これが現実なのです。

 

 孤立・孤独化が時代の流れ。

 

 そうではないと認識しなければなりません。

 様々な形で個人、そして家族・家庭と地域・社会とのつながりを、しっかりと再認識し、結び付ける必要があります。

 社会とのつながりが特に大切な例として一人親家庭が挙げられます。

 一人親家庭においては相対的貧困率が2018年時点で48.1%(厚生労働省資料)と高い現状があります。これによって生じる教育投資格差の課題。また、子育てと仕事の両立を親1人でこなしていかなければならない状況において、子どもとのコミュニケーションの時間がどうしても減ってしまう中で、結果として教育格差が生じ、就業に影響し、そして負の連鎖になってしまうという状況があります。

 公助として様々な公的支援制度があり、それらの強化、それだけでなく子育てを共助での地域ネットワークで支えることも求められます。地域の子ども会や母子寡婦福祉会はその一例です。

 孤立家庭を防ぎ地域で共に育てる、地域共育での観点をしっかりと持つことが求められます。この地域共育については2018年6月議会などで取り上げています。

 

 勿論、一人親家庭だけでなく、高齢者の独居や引きこもりなど、様々な孤立・孤独があり、それらの対策が求められます。

 

 「人は一人では生きていけない。」

 

 私たちは、改めて他者とのつながりの大切さ、家族や身近な友人、地域、社会とのつながりをもっともっと大切にすること、意識することが求められます。

 

 そして、公においては援助制度だけでなく、しっかりと社会ネットワークを築いて、孤独を防ぐ仕組み作りを強化していくことが求められます。


  委員会議事録の内容(本市の現状・女性相談事業)も記載していますので、コロナ禍での女性相談の現状や、孤独対策への要望などが記載されています。是非、ご覧下さい。

 

2021年3月16日 摂津市議会 総務建設常任委員会記録

~ 人権女性政策課答弁抜粋 ~

 

○松本暁彦委員

 続きまして9番目、予算概要24ページ、女性面接相談委託料についてですけども、コロナ禍においてテレワークなど新しい生活様式の中で、当然相談内容、相談件数等、これまで変化があるものと認識をしております。その中で、コロナ禍の状況を踏まえてDV相談の増加傾向について、どのようなものかお聞かせください。

 

○野口博委員長

 由井課長。

 

○由井人権女性政策課長

 続きまして、質問番号9番、女性問題相談事業についてのご質問にお答えいたします。

 DVに関する相談件数は、前年度と比較して大きな増減はございません。緊急事態宣言が出されたときには、従来のカウンセリングを受けてこられていた方が、配偶者が在宅勤務になったことにより外出することができず、カウンセリングを中断されるということは、若干でありますがございました。

 去年の緊急事態宣言以降、離婚に向けた相談がふえており、コロナ禍での不安定な社会情勢が夫婦仲を悪化させ、離婚を決断する方がふえてきていると感じております。

 問題解決に向けた相談を引き続き続けるとともに、より多くの市民に相談窓口を周知していただけるよう、女性相談広報用カードを作成しています。これは、本事業の印刷製本費から捻出しているもので、名刺大のものです。救急搬送時に救急隊員からおけがされている方にお渡しいただくことや、市内の医療機関においても医師会を通じて配布させていただき、病院窓口にて必要な方にお渡しいただいております。

 また、市内JR、モノレールの駅の女性トイレ、摂津市役所内の女性トイレにも設置させていただいており、相談窓口として認知していただけるよう努めております。

 以上です。

 

○松本暁彦委員

 続きまして9番目、コロナ禍における女性相談の状況・傾向については、一定理解をいたしました。また、相談カード配布をしっかりと取り組んでいるところも認識いたしました。

 そのような中、相談内容は複雑で庁内各課との連携が必要と考えております。以前もこの委員会等で取り上げさせていただいております。女性問題相談事業に来られる方というのは、なかなか孤立しがち、あるいは複雑多岐な課題を抱えているケースが多いということで、一つの課だけではなくそれぞれの課で把握することが必要と考えております。改めて、その具体的な取り組みについて、どのようなものがあるのかお聞かせください。

 

○野口博委員長

 由井課長。

 

○由井人権女性政策課長

 続きまして、女性問題相談事業の2回目のご質問にお答えさせていただきます。

 市役所に相談に来られる方は、直接人権女性政策課のほうに相談に来られる方ばかりではありません。市役所のどの窓口に来られた方であったとしても連携できるように、庁内窓口に生活応援連携シートを配架させていただいております。また、複合的な課題を有する虐待等の事案の情報共有について、庁内の組織機構を横断し、かつ連携した施策を遂行するために、各課が相談を受けた際に他課における相談歴の有無をその場で確認できれば、相談者への対応がより円滑にかつ連携対応が行えると考えております。

 そのために基本情報を共有できるシステムを稼働する必要があると考え、DVや児童虐待に加え、高齢者虐待、障害者虐待、特定妊婦など、複数の課に関連する相談者への対応がより円滑に行えるよう、2月から連携システムを稼働し対応しております。

 以上です。

 

○松本暁彦委員

 続きまして9番目、女性相談の件で庁内の連携につきましては、相互に基本情報を共有できるシステムを稼働すると、2月より稼働し対応しておりますというところで認識をいたしました。その点は評価をいたします。ぜひしっかりとネットワークを築いて孤立しがちなそういった方々に対応していただければなと思っております。やはりコロナ禍において、各種イベントがなくなってしまい、またテレワークも進み、一方では自宅待機を余儀なくされたと。そういったことでの社会からの孤立というところが今大きな課題となっていると認識をしております。

 孤立については、今年の2月19日、菅内閣において孤独・孤立対策担当室、孤独担当大臣が任命されたということが大きな話題となっております。また、2018年にはイギリスのほうでは孤独担当大臣というのが任命をされております。実はその孤独というものが、実は人間の心理面において非常に大きな悪影響を及ぼすというところが今認識をされている中、例えば、また児童虐待の件でも厚生労働省の2018年の資料では、地域との接触はほとんどないと答えた人は、そうでない人に比べて虐待傾向が高いということも記載をされております。孤独というものが人の精神状態に悪影響を及ぼすことを踏まえて、しっかりとそれを認識した上で相談者の自立支援等に関しても社会ネットワークとの結びつきをぜひサポートしていただきたいと。いわゆる共助の活用ということも検討していただきたいなと思っております。

 この孤独、あるいは孤立を解消していく取り組みがやっぱり必要になっていく。自立が孤立とならぬように、しっかりとその点も踏まえて相談対応をしていただき、そして、各課と連携して取り組んでいただきたいと思います。これについては要望とさせていただきます。