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児童・生徒の生きる力を養う読書習慣の定着化に向けて


Ⅰ 読書の重要性

 読書は生きる力を養うための極めて重要な取り組みです。

 

 読書をすることで想像力や論理的思考力が着くと云われて、様々な文献、文部科学省、大阪府・摂津市教育委員会で大切であると取り上げられています。

 また、市の読書活動推進計画という読書だけの計画があるほど政策的にも取り組まれているのです。

 

 そのように挙げられている中で、特に私が強調したいのは、脳科学の観点です。

 

 読書が児童・生徒の脳の発達にとても効果的ということを伝えたいのです。

 

 「本の読み方で学力は決まる」※1では、仙台市の約4万人の児童・生徒を検証したところ、小学生では読書1時間、授業以外の勉強1時間が最も効果的であるとされています。

 また、読書をたくさんしていた子ども達ほど脳の神経線維ネットワークの結束力が強く、さらに3年後の神経回路の発達度合いも大きかったという結果があり、読書が言語能力に関する脳の神経回路を発達・成長させることが分かったと記載されています。

 

 読書によって強化された神経回路は、頭の回転の良さにつながり、読書をする児童と読書をしない児童との脳の力に差がつくのです。

 勿論、児童・生徒の時期だけでなく、幼児期からの読み聞かせもとても重要です。

 

 地頭の良い子どもに育てたい、将来において創造力豊かで活躍できるような大人に育てたい、これらは幼児期の読み聞かせと小学校・中学校での読書習慣によって実現することができるのです。

 

※1「本の読み方」で学力は決まる 川島隆太監修(ニンテンドーDS脳トレシリーズ監修)青春新書 2018.9.15

 


Ⅱ 摂津市の課題

 読書は脳の成長を発達させる極めて大切なものと上記で述べています。

 

 しかしながら、本市は全国平均に比べ読書時間が少ない現実があります。

 

 下表の「令和3年度全国学力・学習状況調査」の結果、平日、授業以外に「読書を全くしない」と回答した児童の割合は、7.5ポイント増え、36.9%となり、生徒の割合は、前回より3.8ポイント増え、53.4%となっています。

 

【小学校】

 平日、授業以外に「読書を全くしない」と回答した児童の割合は、7.5ポイント増え、36.9%となっています。全国は約23%であり、差があります。

 

【中学校】

 平日、授業以外に「読書を全くしない」と回答した生徒の割合は、3.8ポイント増え、53.4%となっています。全国は約30%であり、相当な差があります。

 

 

 今、本市の学力は徐々に向上しています。ただ全国平均に達していません。家庭力の課題もありますが、読書環境の課題が一つの壁であろうと私は考えています。

 

 例えばある学校でのヒアリングで、算数の文章を理解できず誤答する児童が多いと聞きました。読書で培う読解力・論理的思考力は国語だけでなく、算数も含め全ての教科に求められるのです。

 

 学力向上のためにも読書を進める必要があります。

 

 

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R031029令和3年度全国学力・学習状況調査結果について.pdf
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Ⅲ 読書習慣の定着に向けて

如何にして、児童・生徒へ読書習慣を定着させることができるか。

 

 まずもって家庭での読書環境の充実は勿論のこと、本市の場合は家庭でできない場合が多く、学校での読書環境の充実が重要となっています。

 その手段の一つとして始業前の時間を活用した読書活動、いわゆる「朝読書」があります。

 

 ただ、この朝読書も行っている学校と行っていない学校に分かれています。そして現時点での私のヒアリングでは、成績優秀な学校ほど朝読書を行っているのが現状です。行えない学校は、子ども達が本を持って来れるか分からない家庭が多かったり、成績を上げる為には計算問題が重要だとしてそれらを行い、結果として朝読書を行えていません。

 確かに本を読むということは直接的に成績を上げることはできませんが、脳を成長させ、論理的思考力等を付けることで、長い目線で見れば、対処療法的な計算問題より、学力向上と生きる力を養うという点ではずっと効果的なのです。

 

 結局、できていない学校の子ども達は読書習慣を定着づける機会を一つ失っているのです。学校によって読書環境に差が生じることは望ましくありません。そのため、全ての小中学校で朝読書をすべきとして教育委員会へ提言しました。

 

 

 また、朝読書の推進の取り組みとして、幾つかの学校にヒアリングしたところ図書室の充実は勿論のこと、気軽に子ども達が本を手に取れるよう学級文庫の充実も必要という声があります。これによって、家庭で本を持たない子ども達が本を手に取る機会を増やすこととなります。

 この取り組みも推進すべきと教育委員会へ提言しました。

 

 

 そして就学前教育から読書の楽しみを知ってもらうことも重要です。そのための就学前教育での読み聞かせの強化は必須です。

 

 これらの取り組みを、摂津市で推進するため議会でしっかりと取り上げています。それは2021年12月15日の本会議の一般質問で質疑を行っています。下記の議事録をご覧ください。

 

 


Ⅳ 議事録

令和3年第4回定例会一般質問 ~本会議2日目 令和3年12月15日~

 

議事録(抜粋)

 

児童生徒の生きる力を養う読書習慣の定着化に向けて

 

○松本議員

 児童生徒の生きる力を養う読書習慣の定着化に向けて、令和3年度での全国学力・学習状況調査で、読書を全くしない児童・生徒が増加したことに関して、どう分析されているのかお聞かせください。

(略※)

 

○南野議長

 教育総務部長

 

○小林教育総務部長

 読書習慣の定着に関わる課題の分析についてのご質問にお答えいたします。

 令和3年度の全国学力・学習状況調査の結果、平日、授業以外に「読書を全くしない」と回答した児童の割合は、7.5ポイント増え、36.9%となり、生徒の割合は、前回より3.8ポイント増え、53.4%となりました。

 一方で、コンピューター等のゲームを1日1時間以上行う割合は、児童は85.9%、生徒87.8%で、ともに全国を大きく上回る結果となりました。

 前回はともに設問がなかったために、経年比較ができませんが、ゲーム機やスマートフォン、パソコン等の普及なども、子どもたちの読書時間の減少に影響を与えているのではないかと捉えております。

(略※)

 

○松本議員

 これよりは一問一答形式でお願い致します。

 まず、読書習慣の定着化に向けてですが、読書の重要性は、議会で幾度となく議論されており、論理的思考力を鍛えるなど、生きる力を養う為に欠かせないことは言うまでもありません。また令和2年第3回定例会の一般質問では、学力と読書時間に相関があると教育委員会は答弁しています。

 本市の読書を全くしない児童が前回よりも増え、また全国平均より大きく上回っていることに強い危機感を抱くべきです。

教育委員会は今、ICT教育に力を入れていますが、こういう時こそ、学びの基礎となる読書を大切にすべきではないでしょうか。

 対策が必要です。例えば、読書習慣定着などを目的として一部の小中学校で朝読書の取組みがなされています。

教育委員会として、市の読書活動推進計画でも推進している朝読書含め小中学校で読書習慣定着の取組みを強く推進すべきですが、どうお考えかお聞かせください。

 

○南野議長

 教育総務部長

 

○小林教育総務部長

 議員ご指摘の始業前の時間を活用した読書活動、いわゆる「朝読書」については、従前より多くの学校で取り組んで参りましたが、現在では小学校に新しく導入された外国語や漢字・計算練習など各校が自校の課題に応じた取り組みを行うようになっており、各校では給食や学習内容が終わった後などの時間に工夫して読書活動を行っております。

 各学校に対しては、読書が学力に与える効果をデータに基づいて示し、「朝読書」や給食時間の後、授業や家庭学習などを工夫し、読書習慣を定着させる取り組みを進めていくよう指導して参ります。

 

○南野議長

 松本議員。

 

○松本議員

 読書習慣定着の取り組みにおいて、学校間で著しく差が出ないよう教育委員会が責任を持って取り組まれるよう強く要望致します。

 また朝読書の推進の取り組みとして、幾つかの学校にヒアリングしたところ図書室の充実は勿論のこと、気軽に子ども達が本を手に取れるよう学級文庫の充実も必要という声があります。

 文科省の紹介で、校区内で使用できる図書カードを児童に配布し、自分たちが読みたいもの、友達に勧めたいものを購入させ、それを教室に置き、学級文庫の充実と子ども達の読書へのやる気スイッチを押し、習慣化に取り組んでいる事例があります。

 教育委員会として学級文庫の充実についてどうお考えかお聞かせください。

 

○南野議長

 教育総務部長

 

○小林教育総務部長

 子どもたちの読書に対する意識を高める上で、学校図書館や学級文庫を充実させ本を身近に置く事は大事であると考えております。

 現在の学級文庫は、十分な数の書籍を配架できていないことに加え、古い書籍が多い実態がございます。また、予算も限られていることから、まずは、学校図書館の読書環境の充実に努め、学級文庫の充実については学校の実情に合わせて検討して参ります。

 

○南野議長

 松本議員。

 

○松本議員

 学級文庫は、子ども達のより身近に本を置くことで、手軽に読書するきっかけを増やすことが期待できます。学校図書館の充実だけでなく、読書へのきっかけを増やす工夫が本市では特に求められているのです。是非、検討下さい。

 その際には、選択制ふるさと納税も活用して下さい。

 そして就学前教育での読み聞かせも非常に重要です。子ども達が早い段階から本に慣れ親しむことも大切で、本市での未就学児への読み聞かせをさらに推進すべきですが、どうお考えかお聞かせ下さい。

 

○南野議長

 次世代育成部長

 

○橋本次世代育成部長

 幼児期、特に4歳児から5歳児の時期に想像力、集中力等の非認知能力が大きく発達するといわれており、遊びの中から、学びの芽を育てる取り組みの一つとして、絵本の読み聞かせは欠かせないものであると認識しております。

 現在、公立園では、1日の読み聞かせの回数を増やし、好きな遊び時間にはグループでの読み聞かせを行っております。また園便りや保護者懇談会等の機会をとらえ、絵本の大切さの啓発し、全ての家庭への絵本貸出しを実施しております。

 新型コロナウィルス感染症から一定過ぎた現在、各園では、近隣の図書館の利用、地域の絵本ボランティア等を園に招いての絵本の会の開催を再開いたしているところでござまいす。

 私立園におきましても、独自の狙いやカリキュラムのもと、日々の保育で絵本の読み聞かせ等により、言葉を豊かにする取り組みを行っております。

 令和4年度以降、公私立園所の就学前施設職員を対象とした、絵本に関する研修の実施を検討しております。その中で、子ども達の読書時間の状況等について共通認識を図るとともに、職員の読み聞かせのスキルの向上にもつながるよう内容の精査をすすめてまいりたいと考えております。

 

○南野議長

 松本議員。

 

○松本議員

 是非とも、未就学児の子ども達が読書の楽しさをより多く経験できるよう要望致します。

 最後に、教育長に令和3年度の調査結果を踏まえ、読書習慣の定着化に向けてどうリーダーシップを発揮されるのか、お考えをお聞かせください。

 

○南野議長

 教育長

 

○箸尾谷教育長

 議員ご指摘のように、これまでわが国での読書等と成績の関係について様々な調査がされております。

 直近では、令和3年度の全国学力・学習状況調査におきまして、家庭の蔵書数、家庭にある本の数ですね、それが多い方が、学力が高くなる傾向があるというふうに言われております。

 また、平成21年度、ちょっと古いですが平成21年度の全国学力・学習状況調査におきましても本が好きだ、と答えた子どもの教科の学力が高くなるということも指摘されています。

 ただですね、さきほど申し上げた家庭の蔵書数が多いということが、ただちに子どもがたくさん本を読むというわけではありませんし、本が好きだという子どもがですね、傾向を分析しますと、そういう子ども達は学校の宿題をしっかりとやったり、あるいはテストの間違いなんかを振り返り、勉強をですね、計画的に行う傾向があることが明らかとなっております。

 そういう意味で言いますと、読書というのは成績に影響はありますけれども、その影響は直接的というよりは、間接的かなと考えております。そういう意味で、本をたくさん読めば学力が上がると、あるいは学力を上げる為には本をたくさん読めば良い、そう簡単なものではないと留意しなければならないと思っております。

 ただ、そうは申しますけども、私も読書というのは非常に大事だと思っておりまして、教科の学力だけでなく、子ども達が大人になって生きていくうえに大切である例えば豊富である知識や、語彙力なんかも身に付くでしょうし、考える力、あるいは表現する力、そして何よりも想像力、イマジネーションといいますか、想像力を鍛えるという意味でも読書というのは非常に大切であるというふうに思っております。

 今後は教育委員会としては、デジタル教科書、あるいは電子書籍などの活用も考えながら、読書環境の整備と合わせまして、子ども達がですね読書に興味を持って、読書が好きになるようなことを行う事で、読書習慣を身に付けさせたいなと考えております。以上です。

 

○南野議長

 松本議員。

 

○松本議員

 是非、子ども達の生きる力を養う、これはやはり読書であろうと私も考えております。それゆえに、現状を踏まえ、対策を進めて頂くよう一層のリーダーシップの発揮を要望いたします。

 (以上)

(音声データ等より作成)

※当該質問に関係のない他の質問項目の部分は省略しています。

 

 当該一般質問で教育委員会は、読書習慣を児童・生徒に身に付けさせたいという答弁を行いました。

 

 私もしっかりと教育委員会の取り組みをチェックし、各学校のヒアリングを行って対策を市に要望するなど、児童・生徒の読書習慣の定着化に向けて取り組んで参ります。

 

 


Ⅴ スマホ・電子書籍等について 

 「一方で、コンピューター等のゲームを1日1時間以上行う割合は、児童は85.9%、生徒87.8%で、ともに全国を大きく上回る結果となりました。

 前回はともに設問がなかったために、経年比較ができませんが、ゲーム機やスマートフォン、パソコン等の普及なども、子どもたちの読書時間の減少に影響を与えているのではないかと捉えております。」

 

 上記は、さきほどの議事録の教育委員会答弁の抜粋です。

 

 アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」※2では、スマートフォンは、「スマホ脳」と云われるように脳が依存しやすい仕組みが取り入れられていると記載されています。人間の脳の報酬系を活性化させて注目を引くというもので、報酬に我慢できる、衝動にブレーキをかける脳内領域の未発達な子ども達は、スマホの虜になるのは明白なのです。

 

 大人ですら、ついついスマホを手にすると長時間見てしまいます。それを自制心がまだ弱い子ども達が手にすれば、あっという間にスマホ脳・スマホ依存となってしまいます。

 

 子どもがスマホに夢中になると、本来すべき「読書」、「運動」、「睡眠」などの時間が奪われ(機会損失)、また集中力低下による適切な長期記憶を妨げられるなど、望ましい成長を阻害する可能性があります。扱いは適切にしなければなりません。

 

 また電子書籍においても、アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」※2ではタブレット端末は、紙媒体より集中力が欠けるとされています。脳が文章に集中するよりも、報酬がないことを無視するのに貴重な処理能力を費やしてしまい、結果として学びが悪くなるのであろうと記載されています。

 実際に、メールやSNSが気になり、ついつい脱線してしまうことは誰しもが経験しているでしょう。

 なお幼児にはタブレット端末での学習は向かないとも記載されています。

 

 子ども達の読書環境の充実においては、ゲームやスマートフォンの取り扱いも適切にするよう合わせて考えていかなければなりません。

 

※2「スマホ脳」 アンデシュ・ハンセン 久山葉子訳 新潮新書 2020.11.20

  


Ⅵ 最後に 

 色々と物事を調べるのにネットはとても便利です。ただ、より深く知りたいと思った時、ネットではなく関連する本を読んでいる自分がいます。課題解決を図るという場合でも本はとても参考になります。

 小さい頃から読書は好きで、生きる力を本が養ってくれたという実感があります。そのことが、改めて教育における読書の重要性を認識させてくれました。

 

 またスマホの話をすると、スマホでのネットサーフィンは何も頭に残りません。ただただ脳のドーパミン量を増やすだけで、その時間は無為なものです。それを分かっていてもつい同じ事をしてしまう自分がいます。

 その時間を読書に費やせば、頭に残り能力向上へとつながり、より有意義に過ごせることでしょう。

 

 子ども達が、その環境によって、生きる力となる読書を忘れ、スマホ依存症とならぬよう取り組んで行かなければなりません。

 しっかりと児童・生徒の読書習慣の定着化を議会で提言してまいります。

 

 


Ⅶ 関連ブログ等