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摂津市防災サポーター制度の現状と課題について(2021.12)

Ⅰ 概 要

 初当選後、最初の一般質問(2017年10月議会)※1において、共助強化のための地域防災リーダー制度を提案しました。

 この制度案は、幾度となく議会で議論を交わし、そして2019年4月摂津市防災サポーター制度として実現しました。

 

 この防災サポーターは民間の地域防災リーダーとして、平素は地域の防災力向上に貢献し、大地震などの有事には市が運営する予定の避難所でのサポートなどを行います。

 

 そして2019年に第1期、2021年に第2期、2022年1月~2月に第3期の募集・養成講座が行われる予定です。(左写真参照)

  この防災サポーター制度は設立から3年が経ち、課題も見えてきました。改めて防災サポーター制度について検証する時期が迫って参りました。

 

 


Ⅱ 制度提案のきっかけ

 まず私がこの制度を提言したきっかけは、自衛官時代での東日本大震災の災害派遣での教訓です。

 

 東日本大震災では東北地方の太平洋沿岸の全てが被災地となり、市内、市外にかかわらず、職員もまた被災者でした。そのため職員の人手が足りず市町村での災害対応業務・復興対応業務に大きな支障が生じていました。

 自衛隊は救出・捜索・物資運搬・道路啓開などの災害活動は可能ですが、復興に向けた計画作成、罹災証明書発行といった各種手続きなどはできません。

 この復興に向けた迅速な対応は震災関連死を防ぎ、地域から人が離れることを防ぎ、結果として地域を守ることになります。そのため、市町村業務を少しでも早く復興へと進めていかなければなりません。

 

 そのことを災害派遣時に感じました。

 

 そして当選後、派遣の時に感じたことを、政策に起こし、制度として行うために考えました。

 

 復興には何と言ってもマンパワーが必要です。公的機関だけでは不足する人材を、地域の人々に支えてもらうことが適切と考えました。それも単なるボランティアではなく、より専門性を備える人が必要でした。

 その支える中心的な人・存在が、いわゆる地域防災リーダーなのです。

 

 平時から防災訓練等に従事し、有事には避難所運営に携わるなどの、市職員と連携して地域防災の核となる地域の防災リーダーとなり得る人材の存在、参画を促す、このための制度を提案することとなりました。

 

 この摂津市は、近隣の吹田市や茨木市等に比べて、少ない職員で市の業務を行っている現状があります。有事での計画外のさまざまな不測事態にも対応しなければなりません。人手不足になることが十分に予想され、なおのこと地域防災リーダーが求められたのです。

 これは実際に大阪北部地震でも経験したところです。

 

 また地域防災リーダーの育成は、自助・共助・公助の連携強化につながります。

 

 制度構築のために、2018年に視察した岩手県宮古市では自治会の防災担当者に防災士資格を取得させ、その次に視察した宮城県仙台市では独自の地域防災リーダー(SBL)を114ある連合町内会に各5名基準で取得させています。

 これらの資料をまとめ市に情報提供するなどして、制度の実現に取り組みました。

 

 それが摂津市防災サポーター制度となります。

 

 


Ⅲ 防災サポーター制度の仕組み

 2019年4月から始まった摂津市防災サポーター制度の設立主旨は、防災意識の啓発や地域の防災対策の充実を図り、災害に強いまちづくりを推進することを目的としています。

 

 具体的には、防災サポーターは発災時、「自助」「共助」の精神に基づき、第一に自分の命を守ること、そして、避難所の開設・運営の支援や行政と連携を行う等、地域防災の要となる方、平常時には、地域の防災対策や防災啓発活動等に積極的に取り組み、地域防災力の向上に寄与いただける方としています。※2

 

 そして防災サポーターになるためには、市の公募に応じること。次に市の養成講座を受講し、防災に関する知識及び技能を習得、受講後、防災サポーターとして認定されます。

 その後、各フォローアップ講座訓練への参加も呼びかけられるものとなっています。

 自らの命を守り(自助)、そして行政と地域の防災活動のパイプ役として共助をけん引する、地域の防災リーダーというところです。

 

 なお、フォローアップについて、令和2年度は子育て総合支援センターの遊戯室で水害を想定した避難所の運営訓練(上記写真)があり、別府コミュニティセンターでも地震を想定した避難訓練で、第1期の防災サポーターの希望を取り、訓練に参加してもらいました。

 また令和2年度の冬に第2期の防災サポーター養成講座で、オブザーバーのような形で第1期に市から声掛けを行い、希望者が参加して受講するという形をとっています。

 

 また、防災サポーター制度と合わせて、防災士資格の取得費補助制度も同時に実施されました。

 これは市と日本防災士機構と連携した取り組みで、資格補助で3万円を市が補助するというものです。この補助の要件として防災サポーターになることも設定されています。

 市は2019年4月以降に防災士資格を取得した方へ制度周知を図り、また防災士機構のホームページに資格取得費の補助を行っている自治体として、本市が掲載されています。

 

 市の防災サポーター制度のメリットとしては、大きく3点です。

1点目は、予算を比較的安くできることです。予算を抑えることで、継続を図ることができます。

2点目は、摂津市が必要とする人材育成ができることです。摂津市の災害特性等に応じた講座が開けます。

3点目は、市職員との関係性の近さ、顔の見える関係を平素から構築できます。信頼関係構築が可能となります。

 

 これは仙台市の地域防災リーダー制度のメリットと同様です。これらのメリットもあり、制度構築が出来れば有用なものとなります。

 

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摂津市防災サポーター認定要綱.pdf
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摂津市防災士資格補助.pdf
PDFファイル 387.1 KB

Ⅳ 現状と課題

 令和3年3月末日における摂津市防災サポーターの登録者数は左表のとおりです。

 市は防災サポーターの募集については3年(約100人)を目処に、今後について再度検討する予定です。

 

 現時点において課題は大きく3点あります。それは①地域差、今後の方向性、有事での計画 です。

 

 まず1点目の【地域差】とは、地域防災リーダーにもかかわらず、地域間で人数の差が生じていることです。それは表からも明らかです。

 これについては、私は制度設立当初から地域ごとにアプローチして満遍なく確保すべきと議会で提言してきました。

 私は宮古市や仙台市のように、まずは各地域で必要数を確保して、そのうえで門戸を広げるべきと言ってきました。これらの理由は、円滑な避難所運営には、地域で信頼厚い方がリーダーとする方が適切という東日本大震災の教訓からです。本市も有事を考慮し、地域の自主防災組織の方に一層加入してもらうことが必要と考えました。

 

 しかしながら、市は当初から公募という形を取りました。その理由としては募集しても本当に応募してくれるか分からないため、公募で反応を探りたいという事でした。一定配慮して地域の自主防災会に声をかけて参加は募りました。

 この地域限定で募るよりも、一般公募を優先する方式については、自治会が無い地域もあって、全ての地域に満遍なく確保することが難しいという市の状況も一理ありました。

 私はそれはそれならば、有事には防災サポーターが地域にこだわらず活躍してもらう対策が必要だと市に提言しています。地域差間を無くすことで、公募の利点を活かすということです。

 

 

 次に2点目の【今後の方向性】についてですが、制度をどう維持していくかが、まだ決まっていません。約100人の防災サポーターを確保した上で、これをどう持続させていくかということです。

 宮古市や仙台市の地域防災リーダーの人数は無限ではありません。あくまでも必要数を確保して、それを継続するという形を取っています。予算の制約も当然ながらあります。

 実際に摂津市の防災危機管理課は、避難所運営を共に行うカウンターパートとして信頼関係を構築し顔が見える関係とするには、100人前後が妥当と考えています。それが300人、500人となると顔も分からないうえに、市のフォローアップも追いつかないからです。ただ、市はこの100人をどう維持していくのか、それが決まっていない状況です。

 令和4年はこの持続方法を決めていく必要があります。

 

 そして、3点目が【有事での計画】です。これが一番の大きな課題で、市は有事における防災サポーターの運用について計画を持っていないのです。

 2021年11月9日の決算委員会の質疑の中で、市は、「防災サポーターに有事には一番近い避難所で運営のお手伝いをお願いしているが、様々な事情があり、どこまでお願いできるか決めかねている。」、というような答弁を行っています。※3

  このことは、有事において、その活動は防災サポーター自身の判断に任せます、市は関知しませんと言っているようなものです。

 防災サポーターが有事に活躍してもらい、避難所運営をサポートし、復興対応の市職員を少しでも増やす、そのためにどう市としてサポーターを運用していくか、という考えが抜け落ちているのです。

 

 何のための制度でしょうか。

 

 制度の平時だけを取り繕って市が有事を適切に想定していないことが大きな問題です。防災サポーターの方から、市から何を求められているか分からないという声も上がっているのも頷けます。

 このことは私も反省し、有事での運用計画を作成していくよう働きかける必要があります。

 

 


Ⅴ 有事に活躍できる地域防災リーダーとして

  防災サポーター制度の大きな3つの課題を克服し、防災サポーターの方々が有事においてしっかりと活躍し、そして公が復興対応をより迅速に行える環境をつくる。このことを実現させるべく2021年後半から取り組んでいるところです。

 

そのため、2021年11月9日の決算委員会の質疑で、以下の大きく4点について市に要望しました。※3

 

① 防災サポーター制度の趣旨(避難所運営について防災サポー ターをはじめとした地域の方々を中心に主体的に運営する。) を実現するために、有事の運用面において取り組むべき。

 

②有事での避難所運営支援の為の具体的行動を計画して、活動できる担保を取るよう。

 

③要請に応じて出動された方には、当然ながら、市職員の指示の下に動いてもらため、その役割を果たせば、一定の出動費用を支払うとか、いわゆる消防団のような出動費用というところも、検討せよ。

 

④10年、20年、摂津市が存続する限りは、防災サポーターも一緒に存続して、しっかりと有事の対応を市職員とともにやっていけるよう計画せよ。

 

 防災サポーターをまず有効に活用するために、有事においてどのように出動してもらうか、防災サポーターが100人いても、100人全員が対応できるわけではありません。まさに様々な事情があって、当然、本人が被災すれば出動はできない、対応できないという方もおられるでしょう。

 その中でも出動して頂いたら、必要箇所に割り振り、避難所運営でのローテーションを組み、市職員のサポートへ回ってもらう。それをどこまで防災危機管理課が、事前に計画に落とし込んでおくかが非常に重要なのです。

 

 私はその事を市に計画するよう求めています。

 

 


Ⅵ 最後に

 2021年11月9日委員会で、私は市に「防災サポーターの有事の運用について何も考えていない。」と言及しました。

 

 この言及に対して、市の危機管理担当理事は最後に、「今年度3期目として、きっちりと体制を整えていきますので、我々として、まず、防災サポーターにどうあっていただきたいのか。当然、当初に設定した趣旨というのがございますので、そこに向かって、じゃあ我々が何をしていくのかということを明確に、きっちりと計画を作りながら防災サポーターの人材養成にも努めていきたいと思っております。

 今回もそうなんですけれども、実際、活動していただく場の提供であるとか、やっぱり我々がどうしてほしいというのを、きっちりと提示していかない限り、防災サポーターが動けるはずがございませんので、そこをしっかりとやっていきたいと思います。」 ※3 と答弁しました。

 その答弁の通りに、防災サポーターの方々が真に活躍できるよう環境をしっかりと整え、平時は地域の防災力向上に取り組んで頂き、有事には避難所運営の支援を行ってもらい、避難所の円滑な運営で避難者を助け、そして市職員が運営業務から離れ、少しでも多く復興対応業務へと携わり、復興を迅速に行う。この仕組みを議会からも推進していきます。

 

 左図のように自助・共助・公助が連携して、災害から命を守れるまちづくりを行う、その取り組みをしっかりと進めて参ります。

 

 

 

※1 2017年10月議会「地域の防災政策について

※2 2019年12月議会「防災サポーターの取組と普及について

※3 摂津市議会 「令和2年度決算 総務建設常任委員会記録 2021.11.9

 

 


Ⅶ 関連リンク等

リンク「摂津市防災サポーター制度

平成31年第1回定例会「予算委員会 総務・建設・消防」p8~p21

平成30年「決算委員会 総務部・建設部」p22