Ⅰ 概 要
コロナ禍において、摂津市立別府小学校は先週4日間の休校となりました。
この休校間、児童の学びの保障のために、臨時でオンライン授業が行われました。その授業を視察し、その有効性や課題などについて考察しました。
そして、今後も市内小中学校で同様のケースが起きる可能性が否定できないことから、市教委に対して、臨時オンライン授業実施を円滑に行うための基準等を作成するよう求めました。
Ⅱ 視察内容
1.視察時期・場所
2022年2月10日(木)4時限目・摂津市立別府小学校
2.休校期間
2022年2月7日(月)~2月10日(木)(コロナ禍での影響により)
3.授業の様子
・ 午前中の1~4時限がオンライン授業、午後は課題付与(個人学習)
・ 授業は児童1人につき1台配布されたタブレット端末を使用
・ 授業様子については以下の写真の通り。
①担任1人よる学級児童への授業
・児童と教師が映像を通してやりとりを行っている。
・各種機材を活用している。
②担任1人による学級児童への授業
・動画による読み聞かせを行っている。
・各種機材を活用し、創意工夫している。
③各種機材を活用した授業
・65インチインチモニター、ビデオカメラ、PC、タブレット端末
④タブレット端末を利用した授業
・学年単位(2学級)での授業を実施中。
・2学級のため、2人の担任教師が役割分担をして授業を行っている。
・1人が課題について音声での質疑応答、1人が課題の添削を行っている。
・児童は積極的に質疑するなど授業に参画していた。
⑤実験を行った授業
・学年単位(2学級)での授業を実施中
・1人が実験作業を行い、1人が音声での質疑応答を行っている。
⑥スクールサポーターによる出欠状況の確認
・学年単位(2学級)の児童の出欠を時限ごとにチェックしている。
⑦音声を流しての英語授業
・学年単位(2学級)での授業を実施中。
・アプリの音声(英語発音)がうまく児童に聞こえなかったため(原因不明)、教師が自声で実施した。
⑧読み聞かせの授業
・本をタブレット端末のカメラ前に置いて、自声で読み聞かせを行っている。
4.授業等について
授業内容と校長先生等の話を踏まえて、気になった点をまとめました。
(1) 一つの学年だけ学級別で、それ以外の学年は、学年まとまってオンライン授業を行っていた。
その理由は以下の通りである。
①授業内容の洗練さは、教師のICT教育への精通度に依る。
どこまで授業内容をオンラインで実施できるかは、教師の能力に左右される。そのため相当な技術を擁していない場合においては、教師1人で行って中途半端となるよりは、教師2人で協力したほうが良いという。
②2人以上のほうが不測事態への対応が比較的容易。
オンライン上などで不測事態があった場合に、教師1人では対応できない場合がある。そのため教師2人(1学年2学級)態勢が望ましいと多くの学年担任は判断した。
③授業準備が大変である。
教師は1~4時限オンライン授業で、午後は翌日のオンライン授業の構成等を検討しなければならず、また授業内容をより良いものにするには、1人より2人で構成を練った方が、負担が少なく効果的である。
今回のオンライン授業はあくまでも臨時の対応で、平時での継続はとても無理だというのが学校側の意見である。
④複数のほうが授業の幅が広がる。
採点の対応が2人のほうが容易で、ある学年では児童に課題を提出させていた際に、1人の教師が音声での質疑応答を行い、もう1人の教師がタブレット端末で課題の採点を行っていた。
また、ある学年では理科の授業を行っていたが、1人が実験を行い、1人が映像・質疑応答を行うなど、TVの通信教育のように工夫ができていた。
(2) 児童の出欠に偏りが生じていた。
①児童の出欠確認は、全ての授業(時限ごと)で行われていた。
出欠表の確認の多くはスクールサポーターが実施していた。(スクールサポーターがいない学年・学級では担任が実施している。)学年での授業となると出欠確認(2学級・約80人)も大変であり、授業実施者が行うのは難しい。
②一部であるが、時限ごとにオンラインを出入りする児童がいる。
例えば、算数は出席して、国語は欠席する、大学のゼミのように授業を受ける児童がいる。
③視察した日は9割方出席していた。欠席する児童は固定化しているという。
児童の欠席理由は不明であるが、家でのゲーム等に走ってしまう場合や機器設定の不具合等もあるかと考える。多くの保護者が接続などの設定をサポートしているとのことで、設定できなかった児童が欠席してしまうのではないか。(このことに関しては、学校が後日アンケートを取る予定であるとのこと。)
(3) 機器の能力上の制限等
①教師個人の機材活用の差
配布以外の個人購入のタブレット端末やカメラ機器などを駆使して、授業を行う教師とそうでない教師と、個人工夫の差が見られた。
②タブレット端末の制限
双方向が動画を使った授業ではタブレット端末の電池がすぐに消費してしまい、コンセントとつないで充電している状況においても減っていく状況であった。そのため、児童はビデオカメラをOFFにして授業を受けることなど工夫していた。
③アプリケーションの不具合
タブレット端末でネットワークに接続する際、アプリのフィルターの関係により、一時期接続できない事態が生じていた。これはネットワークのバグであり、市教委での処置が求められた。
Ⅲ 所 見
この別府小学校での臨時でのオンライン授業では、様々なパターンを確認することができました。そして教師方々が一生懸命に授業に取り組まれていることに非常に頼もしく感じたところです。
当該小学校がICT教育での大阪府の加配も受けており、摂津市内小学校の中で比較的ICT教育が進んでいたことも、ここまでできた要因と見られています。
さて、この視察を踏まえオンライン授業に関しては以下のように感じました。
1.オンライン授業の実施については、児童・教師ともに一定のスキル(少なくとも、接続して双方のやりとりができるスキル)と機器が必要である。
そして市教委のサポートも欠かせない。
2.オンライン授業内容については、教師の教える技術だけでなく、教師のICT機器への精通度にも左右される。習熟した人材は少ないため複数教師での取組みが望ましい。(ただし児童とのやり取りも踏まえれば2学級が限界ではないか。また学校規模で教員数も制限を受けることに留意。)
3.オンライン授業は復習だけでなく、授業を進めることも工夫しだいで可能である。
4.児童の出席状況や教師の負担も踏まえ、摂津市の公立小中学校においてはオンライン授業は臨時に行うものとし、通常は登校しての授業が適切である。(児童が真面目に勉強する環境として自宅より学校が適切であること、コミュニケーション能力といった社会スキルの向上はオンライン授業では困難であることなど。)
しかしながら、コロナ禍での学びの保障という点では、休校時や学年閉鎖時で行うことができるので、有効である。
また保護者からはこの臨時オンライン授業は、好意的に受け止められています。
例えば、保護者からコロナ関連での学級閉鎖等が続いており、休校になったことは感染防止の上で安心であるという意見と合わせて、午前中に授業を受けていることも良いという意見がありました。
このことはオンライン授業があることで、一定の学びの保障を受け、休校に対する不安が軽減されたものと考えます。
Ⅳ 今後について
今後もコロナ禍が続くと予想されます。
そのため、コロナ禍での休校や学年閉鎖、学級閉鎖時において、学びの保障の観点での臨時オンライン授業は有効です。
しかし、市内小中学校はまだまだ臨時オンライン授業の実施能力は不足していると考えます。
よって別府小学校の本事例を分析・参考にして、臨時オンライン授業の基準、要領なりを教育委員会として一定まとめることが求められます。
例えば、タブレット端末は電源をつないで使用すること、オンライン授業は基本的に教師2人で対応すること、児童・生徒数は2学級を超えないこと、出欠は時限ごとに取る、ビデオをONにするのは少なくとも授業開始時・終了時の2回行い児童・生徒の顔を確認すること、などです。
そうすることで、教師の考える負担を減らし、授業内容構築に専念させ、円滑な臨時オンライン授業を可能にします。
このことは教育委員会に2月14日に要望を行いました。
どのような事態においても子ども達の学びの保障ができるよう、しっかりと取り組んで参ります。
Ⅴ 関連リンク