Ⅰ はじめに
摂津市におけるPFOA問題について、その対策推進と風評被害防止の両方の同時進行が求められます。地域住民に二重の被害が受けることがないようにしなければなりません。
対策推進については国や大阪府の調査や健康に関する基準値の策定が特に重要です。そして風評被害防止については、地域住民からの強い要望もあり、その防止の取組み、福島県での事例も挙げて、その風評被害の定着化、固定化の防止が求められます
それらについて議会で質疑を行っています。
(2024/8/21追記・下段参照)
Ⅱ 現状のPFOA対策について
2022年6月末時点でのPFOA対策について列挙しました。
①市は、水環境の継続監視を担う大阪府とも連携して、対応に当たっている。
具体的には、大阪府が主宰する神崎川水域PFOA対策連絡会議において、地域の声を大阪府に届けるとともに、大阪府の調査の支援、府活動時の地元との調整等を実施している。
②市は、国に大阪府等を通じ、早期に人の健康への影響について、科学的な知見の集積に努めるとともに、調査研究及びガイドラインの作成等を要望している。
③市は、PFOAに関する情報発信の一環として、市のホームページを立ち上げている。今後、新たに国、大阪府等から得られた情報を適時更新し、情報発信に努めるとしている。(前議会で要望したもの。)
④現在、環境省において、令和3年度より環境研究総合推進費を用いて、PFOA等が土壌中にどのように挙動するのか、どのように効率的に除去できるのかという除去技術の開発をテーマに研究が行われている。
Ⅲ 風評被害について
2022年3月7日の本会議において、市は「風評被害への相談等につきましては、地域住民からは様々な不安の声が上がっておりますとともに、地域の農業者からは、その地域で栽培した農作物が売れにくくなっているなどといった風評被害が発生しているため、風評被害に対する対策を講じて欲しいといった要望も、市に寄せられています。」という答弁を行っています。
なぜ、本市で風評被害が発生しているのか。改めて風評被害、そして風評加害について福島県の事例を挙げて参考にしました。
1.福島復興に向けた「風評被害」への対応 - J-Stage
出典:「福島復興に向けた「風評被害」への対応 春の年会での理事会セッション 」 本誌編集委員会
①不確実情報・多義的情報は曖昧さを減少させることができず,むしろ曖昧さを増加させる情報・知識である。放射線被ばくによる健康被害には不確実性が残り,説明は多義的にならざるを得ない点がある。そのため福島の風評について,知識のみによる恐怖に対する効果には限界がある。 風評被害を止めるには,風評の加害者が被害に苦しむ被害者の視点をもって被害の深刻さを理解することが必要である。
社会心理学の視点からのアプローチと対処策の展望 関西大学 土田 昭司
②東京都民1,000 人を対象とした調査では,福島県産食品に対する意識割合は,「気にしない」>「躊躇する」> 「積極的に食べる」順となっている。ただし,「後年,影響が出る」,「次世代に影響出る」,と思っている人の割合が多いことから,このような点に関する正しい理解の不足が,風評がなくならない理由の一つと考えられる。また,福島県民の放射線に対する理解は都民よりも深いことを考えると,風評は,「他の地域から投げかけられる被害」とも考えられる。
被災地域でのケアコミュニケーション経験からの示唆 藤田保健衛生大学 下 道國
2.風評加害等について
出典:「菅直人、小泉純一郎両元首相ら「多くの子供が甲状腺がんに…」 福島の関係者が反発」
産経新聞HP 2022/1/31 21:33奥原 慎平
菅直人、小泉純一郎両氏ら5人の首相経験者が欧州連合(EU)欧州委員会に、東京電力福島第1原発事故の影響で子供が甲状腺がんに苦しんでいるとした書簡を宛てた問題で、福島県の関係者に反発が広がっている。国連の専門家委員会などの調査では福島原発事故と甲状腺がんの発症に因果関係が立証されていないからだ。甲状腺がんには治療する必要のない「潜在がん」も多く、裏付けに乏しい中で原発事故と甲状腺がんを結びつけようとする元首相らの行動は風評被害を広げかねない。「科学的根拠に反するメッセージだ。日本の首相経験者という権威による『風評加害』のもとになる」と福島県の渡辺康平県議は31日、産経新聞の取材に菅、小泉両氏の行いについて憤りを隠さなかった。
出典:「東日本大震災に学ぶ 6.風評被害の加害者にならない」 総務省消防庁HP
今回の東日本大震災では、福島第一原発の事故による放射能汚染をめぐり風評被害が心配されています。
実際にいくつかの県で、空気、土、海水や食べ物などから、原発事故が原因となる放射性物質が見つかり、イネを植えることを禁止する作付禁止や、採れたものを市場に出すことを制限する出荷制限などの対策がとられています。
しかし、放射性物質が検出されていない食べ物や、そもそも被ばくの恐れのないものまでが利用を避けられ、商品が売れなくなったり、損害を受けたりするといった風評被害が、実際に起きています。
自分がこうした風評被害の加害者とならないためには、他人から聞いたことを鵜呑みにするのではなく、自分自身でその根拠や出典、正当性を調べる努力をし、正しい判断や言動に心がけることが必要です。
また、他の人に誤った情報を流してしまわないように注意することも重要です。
3.風評被害の定着化・固定化について
出典:【風評問題のメカニズムとその対策 関谷直也】 :環境省HP
環境省資料の風評問題のメカニズムとその対策からは、風評被害の段階論としてプロセス4では、払拭できない神話が「事実化」し定着するという。数年かけて、そしてマスコミ等の周知も相まって、風評問題が事実化、固定化するというものです。
例えばコメの全量全袋検査(放射性物質は検出限界値以下)を行っていても、その周知度合いなどもあって、福島県産を忌避されているということです。
4.市内で起きる風評加害??について
市民の方から苦情が寄せられているのは、「低出生体重児」や「発がん性」などの健康被害の可能性について、過剰に不安を煽るような内容のビラが某党により、繰り返し市内地域に撒かれている、というものです。
現時点で国や市として健康被害が把握されていない中、慎重に対応すべきものが、風評被害を招くような行為に走っている方がおられるという疑念があるというものです。
PFOAは普段でも一定量、全国各地で私たちの口に入っている現状があり、過剰摂取の防止に努めることで大丈夫なのですが、(詳細は前回ブログ参照)そういった事を知らせず、極めて恐ろしい劇物で汚染された土地という印象を作ろうとしているのが見受けられます。不確実情報がPRされればされるほどに地域や市民の方の不安は募ります。
繰り返しにはなりますが、PFOAは除去すべきものです。だからといって現状を無視してまで風評被害を巻き起こすことは許されるものではありません。
Ⅳ 議事録
PFOA対策と風評被害防止について議会で質疑しました。
令和4年第2回定例会一般質問 ~本会議3日目 令和4年6月27日~ 議事録(抜粋)
2 PFOA問題の対策推進と風評被害防止について
○松本議員
次にPFOA問題の対策推進と風評被害防止について、まずはPFOA対策推進について、議会としても南野議長が先月の全国市議会議長会参加と合わせ国へPFOA対策推進の要望を行っています。
現在の市の対応状況等の取組みについてお聞かせください。
(略※)
○南野議長
生活環境部長
○生活環境部長
「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)の取り組み状況」についてのご質問にお答えいたします。
PFOAの対応につきましては、国から示された対応の手引書では、水環境の継続監視を行い、PFOA等の暫定的な目標値を上回っている飲用井戸所有者につきましては、水道水の利用を促すよう助言等を行うように記載されております。このうち、本市の役割はPFOA等の暫定的な目標値を上回っている飲用井戸所有者に水道水の利用を流すよう助言等を行うこととなりますが、水環境の継続監視を担う大阪府とも連携して、対応に当たっているところでございます。
具体的には、大阪府が主宰する神崎川水域PFOA対策連絡会議において、地域の声を大阪府に届けるとともに、大阪府の調査の支援、府活動時の地元との調整等を実施しております。
また、現在、PFOAは水環境全体の暫定的な目標値しか基準がございませんので、国に、大阪府等を通じ、早期に人の健康への影響について、科学的な知見の集積に努めるとともに、調査研究及びガイドラインの作成等を要望しております。
その他の取り組みとしましては、PFOAに関する情報発信の一環として、市のホームページを立ち上げております。今後、新たに国、大阪府等から得られた情報を適時更新し、情報発信に努めて参ります。
(略※)
○松本議員
次にPFOA問題についてですが、対策はできることに関しては進めているものと理解しました。スピード感を持つよう国・府へ働き掛けを継続するよう要望致します。
そしてこの問題解決には国が早期に健康に関わる基準などを示すことも必要ですが、見通しは不明です。
そして分からないが故に、不安が煽られれば瞬く間に風評被害は拡がります。井戸水等のPFOA汚染だけでなく風評被害という2重の不安・被害を地域に与えることは決して許されるものではありません。
例えば、福島県での放射能等を巡る風評被害に関して、環境省資料によると風評被害が定着、固定化してしまい、例え全量検査を行ったところで、その回復が難しい現状があります。
傷つけるのは容易でも回復は難しい。その事実を踏まえ、冷静かつ慎重な広報が今、求められます。
改めて風評被害の拡大と固定化を防ぐ取り組みについてお考えをお聞かせください。
○南野議長
生活環境部長
○生活環境部長
風評被害は、根拠の不確かな噂や曖昧な情報をきっかけに生じるものと認識しております。
PFOAに係る健康に関する科学的知見の集積、国際的な評価がなされていない中で、話題だけが先行してしまいますと、風評被害への影響が大きくなることが懸念されます。風評被害の拡大と固定化を防ぐためにも、国、府等から得られた情報を基に、正確な情報を伝えていくことが肝要であると考えております。
例えば、現在、環境省において、令和3年度より環境研究総合推進費を用いて、PFOA等が土壌中にどのように挙動するのか、どのように効率的に除去できるのかという除去技術の開発をテーマに研究が行われております。
その成果をはじめ、今後、国や府の知見等の情報収集をしっかりと行い、先ほど取り組みで述べました市のホームページを活用して、情報発信をしてまいりたいと考えております。
○南野議長
松本議員。
○松本議員
風評被害を防ぐ取組みについて理解しました。
極めて難しい問題、対策推進と風評被害防止を同時に推進することが重要です。
最後に、PFOA対策について総括的に市長のお考えをお聞かせください。
○南野議長
市長
○森山市長
大気汚染とか、水質等々ですね、環境行政、これの権限というのは、ほとんどと言ってもいいほど国、都道府県、これに委ねられている。そういう意味から言いますと、最先端で窓口を預かっている我々基礎自治体としては、こういった事案が起こる都度と言いますか、靴の上から痒い所にかくという言葉が妥当かは分かりませんけれども、戸惑いを覚えていることは確かでございます。
このPFOAにつきましては、だいぶ前から国際的にも色々と議論がなされてきていることは承知しております。国内でも20年くらい前になるのですかね、発がん性など色々とされておったことも承知しております。
摂津市内におきましては、平成17、18年頃か、水質の定点が設けられ、大阪府のほうで色々と測定して頂いた経緯があります。以来、定期的に行われております。非常に高い数値が出ているということで、以来、関係事業所、また大阪府、当該市と三者による協議と言いますか、安全策と言いますか、そういった協議を重ねてきたところでございます。
そういう状況にありますけれど、さきほどから話が出ておりますけども、この因果関係と言いますか、はっきりとした原因、これが確定をしていない時点において、基礎自治体、我々が判断をするということはなかなか難しいことでございまして、ご指摘のように思わぬ風評被害につながってしまう、特に土壌汚染等々と作物と関係する数値については、何らまだ基準が示されておりません。この段階においては、言及することはできませんが、そういう意味でも、国がこの4月から測定に乗り出して頂いておりますので、早くですね、その結果を出して、安全安心だなと言えるようになれば良いなと思っております。
引き続いて環境省のほうにもしっかりと早く測定し、結果を公表して頂くようお願いをしていきたいと思います。
○南野議長
松本議員。
○松本議員
ありがとうございます。
PFOA問題について、しっかりと市民・地域の為に両方の対策を進めて頂くよう要望致します。
(音声データ等より作成)
重要と思われる部分には強調を入れています。
※当該質問に関係のない他の質問項目の部分は省略しています。
Ⅴ まとめ
①100%分からないから、不安を煽る。
②100%分からないといえども、過去の事実の積み重ね、他事例を踏まえ、慎重な対応を行う。
地域を守るために①と②のどちらを選択するのか。
PFOA対策を着実に推進するとともに、②による風評被害防止を図る。
正しく知り、正しく恐れる。この事が大切です。
今、摂津市においてしっかりと両方の対策を進めて参ります。
◎追記 2022年12月1日
10月下旬に令和3年度の決算認定に関わる質疑が議会でおこなわれました。議事録が市で作成されたので、その質疑の中で、PFOA関連について、抜粋して掲載しました。
令和3年度決算 ~民生常任委員会 令和4年10月24日~議事録(PFOA関連抜粋)
〇松本暁彦委員
8番目、事務報告書の152ページに公害陳情受付件数が記載されております。これはPFOA問題です。改めて記載されている問題にかかわらず、PFOAについて市民から不安の声はどのように上がっているのかお聞かせください。
続きまして農業委員会です。こちらはPFOA問題です。令和3年度、農業委員会に要望書が提出されたとお聞きをしております。農業委員会として農作物に関する風評被害の現状をどうとらえているのか、 お聞かせください。
〇菰原環境政策課長
それでは、8番目の質問、PFOAに係る市民の不安の声に関するご質問にお答えいたします。令和2年6月に、環境省が令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査の結果を公表し、大きく報じられたことから市民の不安の声をお聞きしております。
具体的には、水道水を飲用しても大丈夫であるか。農作物を食べてよいかといった声をいただいております。そのような問い合わせがあった場合には水環境全体で暫定目標値等が示されていること、農作物には現在基準がないこと等について、現状知り得る事実をお伝えしております。以上でございます。
〇山下農業委員会事務局長
それでは、農政部局に関わりますご質問にご答弁申し上げます。まず質問番号9番、PFOA問題に関わって農産物に関する風評被害の現状をどうとらえているかというご質問に答弁申し上げます。
農業委員会に対します直接的な意見といたしましては、令和4年2月28日付で市民の方から「PFOA問題の対策推進と風評被害防止に関する要望書」が提出されました。
要望書の内容といたしましては、客観的事実を述べずに発がん性や低出生体重児発生など可能性だけを過剰にPRしたビラが市内に配布され、PFOA問題が水俣病問題と同等だというような趣旨のことが一部議会や報道等でございました。これにより、地域住民が不安になり、地域農作物を敬遠する事態が発生する風評被害が引き起こされていることから、市においては、地域住民の不安を取り除くよう、あわせて風評被害を防止する対策を図ることを強く要望された内容となっておりました。
〇松本暁彦委員
8番目、PFOA問題です。市民から不安の声が上がっている状況については、理解をいたしました。先ほど農業委員会からは、農作物への風評被害のことをお聞きしました。農作物以外での風評被害を把握しているのか、また、風評被害の防止についてどのようなものかお聞かせください。
9番目、農業委員会に関する風評被害の現状についてお聞きをいたしました。要望書の内容を説明していただいたことは理解をいたしました。
実のところ、私も地域で農作物を生産される方から相談を受けております。その相談をご紹介します。あるビラを持ってきたお知り合いの方から、この地域の野菜は汚染されており、食べないと言われたそうです。すごく精神的ショックを受けたということでした。そして実際その方の生産している野菜の売れ行きが悪くなり、どうにか対応してほしいというものでございます。その上でその方が、この被害を一体誰が補償してくれるのかと。後々調査をしてその地域が何も健康上問題ないとなったとき、風評被害を引き起こした方々は被害者に補償するのか、何事もなかったように振る舞うのではないかと話されておりました。
私は、その相談にはショックを受けたと同時に、対策が必要であると強く認識をしました。そういった事例が他にあるか、PFOAの農作物への風評被害の実態調査等を行われたのか、お聞かせください。
〇菰原環境政策課長
それでは、2回目の質問、農作物以外の風評被害の把握、風評被害の防止に関する取り組みについてお答えいたします。農作物以外の風評被害の関連のお問いとして不動産としての資産価値の低下を懸念する声はいただいているところでございます。風評被害は根拠の不確かなうわさや曖昧な情報をきっかけに生じるものと認識しております。
本市といたしまして、国へは人の健康への影響に関する基準やガイドラインの整備を要望し、国・大阪府等から得られた情報を基に正確な情報を発信し風評被害の防止に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。
〇山下農業委員会事務局長
それでは、質問番号9番に係ります2回目のご質問、農作物に係ります風評被害に対する実態把握でございます。先ほど申しました令和4年2月28日付、要望書を受けまして、風評被害に対する実態把握につきましては、今年5月に当該地区の農業者等から情報収集、ヒアリング等を行いましたが、農業に関連する風評被害の話は確認できませんでした。
しかし、先ほど委員からお示しのありました事例もございますことから、引き続き農業従事者等から情報収集を行い、当該地区の風評被害の実態把握に努めてまいります。以上です。
〇松本暁彦委員
8番目、風評被害です。これは不動産に関する風評被害の懸念の声が上がっていることは認識をいたします。私も実際にお聞きをしております。
また風評被害の防止についても理解をいたしました。風評被害の防止は早期から努めていかなければならないと考えております。環境省資料の風評問題のメカニズムとその対策からは、風評被害の段階論としてプロセス4では、払拭できない神話が事実化し、定着するといいます。数年かけて、そしてマスコミ等の周知も相まって、風評問題が事実化、すなわち固定化するというものです。
例えば米の全量全袋の検査を行い、放射性物質は検出限界値以下と確認されていても、その周知度合いなどもあって、その検査を知らない方からは福島県産を忌避されているそうです。
繰り返すようですけれども、PFOA問題に加えて風評被害という二重の被害を地域や生産者にもたらすことは決してあってはならないと考えます。風評被害の固定化は必ず防止しなければなりません。要望とさせていただきます。
農業委員会です。農作物に関してまだ風評被害が広がっていない状況であると理解をいたしました。今後も風評被害が広がらないよう、環境政策課と連携して取り組む必要があると考えます。
風評被害の拡大を懸念する中で地域から私にも質問がありました。低出生体重児、発がん性などの健康被害の可能性についてです。市が行った情報提供は客観的にも事実でも行き過ぎた不安感を鎮め、その風評被害拡大防止に少なからず寄与したものと考えます。地域が極度な不安に陥る前に風評被害拡大を抑えようとしたことは適切であると考えております。
この件で健康に関することは、特に慎重にすべきものです。例えば、低出生体重児に関して、アメリカのデュポン社での飲料水汚染に関して調査をされたC8サイエンスパネルです。こちらでは高コレステロール、潰瘍性大腸炎、甲状腺 疾患、精巣がん、腎臓がん及び妊娠誘発性高血圧症のC8、PFOAばく露との推定関連があると結論づけられておりますけれども、早産または低出生体重児との間には推定上の関連性はないとされております。
また、そのデンマーク国内出生コホート内研究での妊婦におけるPFOS及びPFOAの血漿レベルと乳児の出生時体重及び妊娠期間との関連を調査したものがあります。母親の血漿PFOAレベルと出生時体重との間に逆相関があることは示唆されているものの、早産または低出生体重児のリスクと関連していなかったとされております。
ただ、これは食品安全委員会、ファクトシート、パーフルオロ化合物に記載されている一文では、英国健康保護庁HPAで、2009年にラットの二世代繁殖毒性試験を行って、1日当たり体重キログラム当たり30ミリグラムのPFOAを投与したと。親世代の生殖への影響は見られなかったが、F1、つまり1世代目で、動物の生存率低下、そしてF1及びF2、二世代目の動物の体重低下が観察されたとされております。
国の水道水の暫定目標値が今1リットル当たり50ナノグラム、これは50キログラム体重の人が、1日当たり100ナノグラム摂取しても問題ない数字です。それから見ると30ミリグラム、すなわち1日当たり300万ナノグラムという摂取量は、この摂津市では普通に生活していれば、まずあり得ないことであります。動物実験から見れば確かに低出生体重リスクはあると言えますが、リスク内容の中には雲泥の差、あるいはいろいろな意見が存在しております。
PFOAに関しては不確定なことが多く、様々な推測や考えがあるのは事実であります。そういうことについては議論を深め、国に対応を求めていく上で必要なことと思います。
ただ、本市の飲料水は汚染されず、健康被害も現況把握されていない中で、それらをどう市民に伝えるべきかが一つ大事だと思います。繰り返しますが、不確定な情報によって地域に風評被害をもたらすことは許されるものではなく、風評被害からも市民を守らなければなりません。PFOAの存在だけで風評被害は起こりません。それを巡りどのような報道がなされ、あるいは広報物の媒体等が存在し、それを我々がしっかりと把握しないと風評被害は防止できません。
今後、また要望書が上がってくるなど風評被害への懸念の声が上がれば、例えば、味生地区の一般の生産者等により詳細なアンケートを取るなど細かい実態調査が必要と思いますので、要望とさせていただきます。
当然ながら、PFOAの問題の解決には実態解明が最終的には必要不可欠でございます。健康への影響も含めた調査については国へ行うよう要望を継続され、できる限り早期の実態解明を求めるよう、大阪府、そして国に継続的に働きかけ、また当該企業への取り組み推進もさらに促すように要望とさせていただきます。9番目は以上です。
(以上)
◎追記((2023/5/10)
1.国への意見書について
摂津市議会の2023年第1回定例会において、国へ提出するための上記「PFOA等についての健康基準を速やかに定めるとともに健康影響調査及び疫学調査を求める意見書」(2023.3.28付)を、全員賛成で可決しました。
PFOA問題では分からないことからくる不安を速やかに解消することが求められます。ただ慎重にすべきは基準という重要な指標をまずもって作成しなければならないという事です。基準が無い調査は成否が分かれ不安を加速化し、更なる混乱を引き起こすことが十分に予想されます。
会派として、この意見書原案が提出された際には、他会派とも調整して表題に「健康基準を速やかに定めるとともに」を追記し、合わせて本文内に「風評被害」の文言も追記しました。
少しでも早いPFOA対策が求められます。
2.議会質疑について
令和5年度予算 ~民生常任委員会 令和5年3月13日~
議事録(生活環境部・保健福祉部)
同じく2023年第1回定例会では民生常任委員会にで予算審議も行われました。そこで、PFOA問題に関して所管する生活環境部環境政策課へ質疑が多々ありました。
私も前の議員の質疑も踏まえて、総括的にやり取りを行いました。それは以下の通りです。
(全文はこちらをご参照ください。)
〇松本暁彦委員
(略)
続きまして、15番目、これも各委員からも議論がございました、PFOAについてということで、それぞれの状況についてはいろいろと理解をいたしました。
PFOA対策で重要なことは市民の不安解消とPFOAの除去・敷地内からの漏出防止、そして、風評被害防止の大きく3点であろうと今私は考えております。しっかりとPFOA対策を行うことは市民の安心につながります。
国、府、そして、当該企業と連携して着実に進めていくことが必要と考えますけども、令和5年度の取組、市としてどのような取組というのを総括的に、これまでの細かい議論がありました、総括的にお聞かせいただきたいなと思います。
(略)
〇香川良平委員長
菰原課長。
〇菰原環境政策課長
(略)
続きまして、15番目の質問、PFOAに関する令和5年度の市の取組についてでございます。
PFOAの対応につきましては国から示された対応の手引書では、水環境の継続監視を行い、PFOA等の暫定的な目標値を上回っている飲用井戸所有者につきましては水道水の利用を促すよう、助言等を行うように記載されております。
このうち、本市の役割はPFOA等の暫定的な目標値を上回っている飲用井戸所有者に水道水の利用を促すよう、助言等を 行うこととなりますが、水環境の継続監視を担う大阪府とも連携して、引き続き対応に当たってまいりたいと考えております。
また、令和5年1月に設置されました、国のPFASに対する総合戦略検討専門会議の検討の事項に、これまで議論がございましたけども、国民への分かりやすい情報発信、リスクコミュニケーションの在り方がございます。その今後の予定として住民の不安に寄り添い、適切な情報発信を行っていく必要があるとQA集の作成が予定されております。
QAの中にはPFOA等を含む水道水、井戸水を飲用してもよいものか、健康影響を把握するためにPFOA等の血液検査を受けるべきか等がございます。このようなQA集が示された場合には、風評被害の拡大と固定化を防ぐためにも本市のホームページからリンクを貼り、情報発信に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。
(略)
〇香川良平委員長
松本副委員長
〇松本暁彦委員
(略)
15番、PFOAの件です。令和5年度の総括的な取組については理解をいたしました。国でPFOAのQ&Aを作成しているということです。それができれば速やかに市としてもホームページ等に掲載をして、周知をぜひしていただきたい。
また、当該企業が矢板を設置することもお聞きをしております。少しでも迅速にされるよう、しっかりと働きかけを要望いたします。加えて政府が健康に関する指針も出されるよう国へ働きかけることも要望いたします。やはり指針がなければ本当に不安が残ってしまう。その不安が解消されないと市民にとっては非常に残念なことであります。しっかりとその対応が必要だと思います。
引き続き市長も含めた市が一丸となって取り組まれ、令和5年度も対応されるようにお願いをいたします。これは要望といたします。
(以上)
引き続き議会からもしっかりと対策を進めるよう提言して参ります。
追記(2023/8/3)
令和5年1月に環境省が設置した「PFASに対す る総合戦略検討専門家会議」の監修の下、「PFOS、PFOAに関するQ& A集」が添付のとおり作成され、環境省のホームページに掲載されています。
環境省HP「PFOS、PFOAに関するQ&A集」及び「PFASに関する今後の対応の方向性」等について
追記(2023/12/15)
追記(2024/4/15)
◎令和6年第1回定例会での質疑
令和6年第1回定例会(2024年2月20日~3月27日)の代表質問で「PFOA対策」の進捗状況について質疑しました。
今回は代表質問ということで、自民党・市民の会を代表して、光好議員が質疑を行いました。
その概要は下記の通りです。
~質疑項目「PFOA対策について」~
◎市の答弁(抜粋)
1.市長は令和6年2月に上京し、環境省等に対策を要望。(これまでも幾度も上京しています。)
2.令和5年1月から環境省は、2つの専門家会議を立ち上げ、同年7月に「PFOS、PFOAに関するQ&A集」を作成した。
3.令和6年2月に内閣府食品安全委員会において、「PFASの健康影響に関する評価書(案)」をとりまとめている。
4.令和5年度から農林水産省では5年間にかけ「農産物中PFASの分析法の確立、農地土壌、水等からのPFAS移行特性の解明」をテーマとした研究が行われている。
4.大阪府が主宰する神崎川水域PFOA対策連絡会議において水環境の継続監視を行う大阪府と連携する。
5.令和5年11月からダイキン工業は、恒久的な流出防止策として遮水壁の工事に着手。
6.市は風評被害防止の観点からも国等から得られた確かな情報の発信に努める。
◎市の答弁より「PFASの健康影響に関する評価書(案)」について
1.評価書(案)では、生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる耐容一日摂取量(TDI)として、PFOA,PFOSともに体重1kg当たり20ngが示され、例えば体重50kgの方であればTDIは1,000ngとなる。
2.現時点の情報は不足しているものの、通常の一般的な国民の食生活から食品を通じて摂取される程度のPFOS及びPFOAによっては、著しい健康影響が生じる状況にはないものと考える。
3.評価書(案)は現在パブリックコメント中であり、評価書として定まれば市のホームページからリンクしていきたい。
◎会派として、市への要望について
1.市民の不安解消のためPFOA対策を着実に進めるよう要望。
2.風評被害防止にも図られるよう要望。
⇒PFOA問題は長期的な課題です。
健康影響や農作物等の土壌の調査など詳細解明が不安解消となり、
また土壌への浸透防止も重要です。
そして風評被害防止も重要です。不安を過度に煽ることのないよう冷静に、しかしして着実に進めなければなりません。
引き続き、PFOA対策について議会からも進めて参ります。
【関連記事】
◎朝日新聞デジタル
PFASが住民の血液から検出 大阪府の459人を市民団体が分析 [大阪府]
村井隼人 2024年4月1日
ダイキン工業(本社・大阪市)の淀川製作所(大阪府摂津市)周辺で有機フッ素化合物(総称PFAS(ピーファス))が検出された問題で、市民団体が住民らの血液を調査し、その中間結果を31日に発表した。(略)
⇒ 摂津市はこれまでの議会にて、市民のPFOA等の血中濃度調査の要望に対して、国のPFOA等の健康に与える影響が明確化されること、健康への基準設定がまずもって必要と答弁しています。
健康への影響や基準等が明確化しなければ、血中濃度に対する正確な判断ができないからです。ややもすれば間違った解釈をもたらし、むしろ誤った処方を導きかねず、慎重さが求められるところです。
そのため議会でも国への「PFOA等についての健康基準を速やかに定めるとともに 健康影響調査及び疫学調査を求める意見書」を令和5年3月28日に可決しています。
追記(2024/4/26)
① 免疫疾患におけるPFASの免疫抑制及び免疫促進影響の解明に向けた実験的検証
② PFASsの規制に関わる優先付け及び合算評価に資する遺伝子発現解析による有害性評価法の開発
③ 毒性影響・毒性発現機序・種差を考慮したPFASの包括的な健康影響解明:環境疫学ー毒性学融合研究
環境省はPFASの有害性やその定量的な把握手法に関する研究の推進に力を入れ始めました。ただし、研究期間はいずれも令和6年度から令和8年度であり、多少時間がかかるようです。
それでも我々が要望している健康に関する解明が進められるとの事ですので、成果が期待されます。
追記(2024/7/5)
下記図は評価書概要から抜粋したものです。
「PFOS及びPFOAの摂取と健康影響の関連について、動物試験・疫学研究から得られた科学的知見を、一つ一つ精査した結果、活用可能な根拠として、PFOS及びPFOAの動物試験でみられた出生児への影響が挙げられました。」という記載があります。ただし、高用量でみられた動物試験の結果であり、疫学研究でみられた出生時体重の低下とは分けて考えることが適当とされています。
また、耐容一日摂取量(TDI)として、 PFOS 20 ng/kg体重/日(2×10-5 mg/kg体重/日)、 PFOA 20 ng/kg体重/日(2×10-5 mg/kg体重/日)が挙げられました。
食品安全委員会にてリスク評価が行われました。今後についてはリスク管理をどう具体化していくのかが大きく問われます。
追記(2024/4/26)
2024年8月、環境省はPFOS・PFOAに関するリーフレットを作成しました。上記がそのリーフレットになります。
ご参考下さい。
引用元:環境省「PFASに対する総合戦略検討専門家会議(第5回)議事次第・配付資料」
またリーフレット以外にも、第5回専門家会議では、『「PFASに関する今後の対応の方向性」 を踏まえた対応状況について』等の資料があります。
この「対応状況」についてでは、左写真のように自治体における健康状態の把握等に関する対応事例として、吉備中央町の内容を記載しており、データからはPFOS及びPFOAのばく露を反映する形で有病割合比が増加している傾向は観察されない、と記載されています。
吉備中央町の状況、そして本市の状況を踏まえて、健康影響に関しては風評被害も鑑みて改めて慎重に対応する事が求められると考える次第です。
Ⅵ 関連リンク
1.摂津市環境政策課「有機フッ素化合物(PFOA、PFOSなど)について」
2.大阪府 化学物質対策「有機フッ素化合物(PFOA等)」
3.環境省HP「PFOS、PFOAに関するQ&A集」及び「PFASに関する今後の対応の方向性」
4.内閣府食品安全委員会「内閣府食品安全委員会:PFASワーキンググループ」
5.ダイキン工業「PFOAに関する当社の取り組み」