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5年間で摂津市の出生数は約14%も減少、加速する少子化の危機と国のちぐはぐな対策について


Ⅰ はじめに

 

 子育て支援少子化対策別物ではないのか?。

 

 摂津市の出生数は令和元年度の出生数765人に対して、令和5年度は660人となり、5年間で105人(13.7%)も出生数が減少してます。

 またR5年度は前年比でも9%で、この5年間を見ても大きな減少幅となっています。

 この状況に強い危機感を抱きます。予想以上のスピードで進む少子化では、持続可能社会を維持することは困難です。早急な対策が求められます。

 

 国はこども家庭庁を創設し、5兆円規模の予算を組んで少子化対策に取り組もうとしていますが、財源確保も含めて問題が指摘されています。摂津市の状況等も踏まえて適切な少子化対策等について考察しました。

 

 

 

 


Ⅱ 衝撃的な摂津市の出生数等

1 摂津市の出生数

 左表は令和元年度から令和5年度にかけての摂津市の出生数を示したものです。(出生数は市の担当部署に確認した。)

 

 令和元年度の出生数765人に対して、出生数はほぼ右肩下がりであり、令和5年度に至っては出生数は660人となり、5年間で105人・13.7%も出生数が減少してます。

 またR5年度は前年比でも9%とこの5年間を見ても大きな減少幅となっています。

 

 この状況に私は強い危機感を抱いています。予想以上のスピードで進む少子化では、持続可能社会を維持することは困難です。早急な対策が求められます。

 

2 摂津市議会での質疑

 

 摂津市議会2024年第1回定例会の予算を審議する委員会にて、少子化について質疑しました。その内容は以下の通りです。

◎松本議員 

 摂津市の出生数について問う。

 

〇出産育児課長 答弁

 本市における出生数の推移は、

①令和元年度が765名、

②令和2年度が755名、

➂令和3年度が759名、

④令和4年度が725名、

令和5年度の出生数の状況はさらに減少し、2月末時点の速報値では599名となっている。

 

 

◎松本議員 

 出生数の減少を踏まえ、

①待機児童の話も、自然解消になってしまうだろう。

②もう2、3年のうちに、就学前教育施設存続の議論すら始まっていくのではないか。

➂その後に来るのが、小・中学校の統廃合の話である。

④非常に本市の教育施策を変えていく可能性があり、大変危惧をする。

 それらを踏まえて、(仮称)摂津市こども計画の反映について問う。

 

 

〇次世代育成部長 答弁

①出生数について

 ①ー1 

 全国では、速報値で75万人ほど。前々年が80万人ぐらい、2023年が75万人と、いずれもマイナス5%という数字になっている。

 ①ー2

 関西2府4県では、2023年の数値で、マイナス3.6%、で、大阪府はマイナス2.7%、京都府がマイナス7.4%、兵庫県がマイナス2.5%

 ①ー3 

 摂津市では、2021年から22年で、マイナス 7.3%、2022年から23年で、マイナス9%である。

②摂津市は全国に比べて、減少率がかなり高いということで危機的な部分がある。ただ、この状況を単純に見ることは適切ではない。

➂摂津市の場合は、安威川以南と安威川以北の大きな人口構造の違いがある。まだ2023年のマイナス9%の状況、地区別の分析はできていない。

 ➂-1

 安威川以北は、令和元年度と令和4年度の4年間の増減率では、プラス3.6%、千里丘小学校はプラス17.7%、三宅柳田小学校もプラス4.1%である。

 ➂ー2

 安威川以南では、令和元年度から令和4年度の推移で、全体でマイナス19.6%。別府地域、鳥飼地域、鳥飼 東地域はマイナス30%を超えている。味生小学校はマイナス19.8%である。

④安威川以北の問題は、少子化よりも、増加を続けるこの年少人口に対する施策である。安威川以南については、著しい減少の部分をどういうふうに克服するかは考えていかなければならない。

⑤教育委員会で、例えばこの施策を考えたときに、安威川以南と安威川以北で違うアプローチをするのは、なかなか難しい。

 ただ、現在、市として鳥飼グランドデザインを実施しており、その中で位置付けをすれば、理屈的には通る。その部分で、教育委員会として協力していくということになる。

⑥この状況を、(仮称)摂津市こどもの計画にストレートに反映するのは難しい

 

 

◎松本議員(要望) 

安威川以北は、開発がある中で、新陳代謝、つまり出入りがあり、子育て世帯が入ってくる影響は大きい。

②古い地域は、なかなか出入りが少なくなってしまって、地域そのものが高齢化してしまう傾向にある。

➂全国的な少子化が加速化すると、入ってくる方も、子育て世帯がどんどん少なくなるため、出生数を増やすことが最終的な解決になる。

④出生数を増やすのは国の施策にもつながるので、としては子育て支援をしっかりとやっていただきたい。

子ども一人の世帯に、二人目、三人目を産んでもらうというところも大事である。

⑥一般的に言われている孤立感・不安感、経済的な負担感等の軽減・改善について、しっかりと(仮称)摂津市こども計画にも反映していただきたい。

 

(以上)

 

 

また、令和4年第4回定例会でも質疑しています。その内容は下記ブログを参照下さい。

少子化対策の取組みとして包括的な子育て支援施策について質疑を行っています。

 

 

摂津市として子育て支援の取組みを怠っているわけではありません。

18歳までの医療費助成制度」や「ランドセル無料配布」、「児童虐待防止の取組み推進(孤立家庭の解消)」など、むしろ他市以上に力を入れているのではないでしょうか。

 

 市として、子育て支援はしっかりとやっています。

 

 それにもかかわらず、大幅な出生数の減少となっています。次世代育成部長の答弁➂ー1の安威川以北のプラスについても、実際、新たなマンションに子育て世帯が転入していることが大きな要因です。

 

 議会質疑では、「子育て支援施策について、他市との背比べ、子育て世帯の奪い合いではないか。」という文言がよく出ます。力を入れる子育て支援策子育ての支援とはなっているものの、出生数を増やすという事に至っていないというのが、行政・議会ともに認識している、というのが実態ではないでしょうか。

 

 

 それら状況を踏まえると、少子化対策子育て支援別ものと考えざるを得ません。

 

 

 

 

3 明石市と神戸市の子育て世帯の争奪戦

 

 上記の摂津市の状況を裏付けるものとして、明石市の状況を見てみます。

 

 ご存知の通り、明石市子育て支援に特に力を入れています。その取り組みは全国に知られています。

 

 その明石市の出生数はどうなっているのでしょうか?

 

 

① 明石市の人口の動き(令和5年中の人口動態

 明石市の「令和5年中の人口動態」に記載されているものを引用しました。

 

 まず令和5年中の自然増加数(出生数-死亡数)は△554人で、前年より 191人の増加となっています。

 そして出生数は2,732人前年より136人の増加、人口千人当たりの出生率は8.9で、前年から0.4ポイント上昇しています。 

 

 これだけ見れば、明石市は出生数を増やしており、少子化対策に成功していると思われるかもしれません。ただそう単純な話ではないようです。

 

 更に細かく市内・市外の転出入の状況について、「社会動態を5歳階級別」に見ると、0~4歳及び20~39歳が転入・転出ともに多くなっており、0~4歳及び25歳~39歳では転入超過(他市から明石市へ転入)が続いています。

 これまで転出超過が続いていた15~19歳は転入超過へ転換した一方、20~24歳、50~54歳の転出超過(明石市から他市へ転出)は続いています。

 

 年代別の転入超過は25~29歳の614人が最多。以下、30~34歳=428人▽0~4歳=289人▽35~39歳=243人▽10~14歳=106人-と続き、子育て世代、その子ども世代が上位となっています。

 当然ながら転入超過の04歳児と59歳児(384人)には両親もいることから、子育て世帯で明石市内へ転入される方々が多いと見ることもできます。

 

 つまりは子育て世代(子育て世帯)の転入超過によって出生率が押し上げられたと見られるのです。

 

 

 

② 神戸市の人口(2023年中の人口の動き

 

 次に、明石市の隣にある神戸市の「2023年中の人口の動き」を見てみます。

 

 左の「図5自然増減数の推移」によると、自然増減数は9,832人の減少で、17年連続の減少。出生数は8,818人、前年より378人減少となっています。

 

 また、出生率は5.88%で、前年より0.21ポイントの低下となっています。

 

 次に年齢別・相手地域別の転出入の状況では、25~29歳で転入超過(他市から神戸市へ)となった地域は西日本、国外などで、対して転出超過(神戸市から他市へ)となった地域は阪神間6市、東播臨海部(明石市,加古川市,高砂市,加古郡)、大阪市、東京圏などとなっています。

 

 「図15-2 年齢別、転入超過数(東播臨海部)」を見てみると、年代別の転出超過(神戸市から東播臨海部へ)は25~29歳の338人が最多。以下、0~4歳=297人▽30~34歳=264人▽35~39歳=201人-と続き、子育て世代、その子ども世代が上位となっています。

 これは明石市の転入超過の世代とほぼ一致していることが分かります。

 なお、東播臨海部と比較して、大阪市へは転出超過は20~24歳の640人が最多、そして0~4歳=34人は転入超過となっており、若い単身世帯が大阪市へ移動しているのが分かります。

 

 

 これらの①明石市と②神戸市の状況を分かりやすく述べた記事を2つ紹介します。

 人口増加が9年間続いている兵庫県明石市で、この間に兵庫県内他市町からの転入者が転出者を9319人上回っていたことが分かった。神戸市との間では転入超過が約4250人となり、超過全体の半数近くを占めた。(略)

■子育て世帯が押し上げ

 年代別の転入超過は25~29歳の3391人が最多。以下、30~34歳=2477人▽0~4歳=1638人▽35~39歳=1430人▽5~9歳=603人-と続き、子育て世代、その子ども世代が上位となった。

 また、この9年間の明石市の死亡数は出生数を1048人上回り、「自然減」の状態。20年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)は1.62と、10年前と比べて0.14ポイント上がった。市の担当者は「若い世代の転入超過が出生率を押し上げた」とみている。(略)

 

 

 近年、子育て支援策を充実させてきた神戸市明石市競争が続いている。来春にも「待機児童ゼロ」の達成を見据える神戸市は、待機児童の解消に苦しむ明石市の駅に、「0」をアピールするポスターを掲示。一方、明石市は保育士の定着を狙った一時金を神戸と同額に引き上げた。隣り合う両市は「過度な競争は本意ではない」と口をそろえるが、明らかに相手を意識した“戦い”となっている。(略)

 16年には、広報紙や公式サイトで神戸市などと名指しで比較して子育て費用が安いと強調した。神戸市の幹部がいらだちを募らせる中、17年度の神戸市から明石市への転出超過は、子育て世代とされる25~39歳で641人に上った。

 この頃から、神戸市の反攻が始まる。(略)

 

 

 

 ①~④の内容を踏まえると、明石市の子育て支援の充実は、他市の子育て世代(子育て世帯)の流入を招き、それが明石市の出生数・出生率を押し上げているということです。

 

 勿論、明石市の取組みが子どもを人目、三人目を持とうという世帯を増やしているといったことは十分に考えられるものの、近隣市を含む全体を見れば、子育て世帯という限られたパイの奪い合いの結果ということとなります。

 極端な話ですが、摂津市に置き換えると安威川以北が明石市で、安威川以南が神戸市と例えられるのではないでしょうか。(極端ではありますが。)

 

 子育て世帯というパイを増やすことが、今求められます。

 

 そうなると少子化対策子育て支援別ものとして対応しなければなりません。

 

 

 

 


Ⅲ 国の取組み

 

 国全体の少子化の状況とその対策について記載しています。

 

1 少子化の状況

①人口動態統計速報(令和5年12月)

ダウンロード
人口動態統計速報(令和5年(2023)12 月分).pdf
PDFファイル 197.9 KB

 厚生労働省の資料です。

 内容については下記の記事をご参照ください。

 厚生労働省が27日に発表した人口動態統計の速報値(外国人らを含む)によると、2023年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は過去最少の75万8631人だった。初めて80万人を割った22年から5.1%減り、少子化が一段と進んだ。(略)婚姻数も50万組を割り戦後最少。死亡数は過去最多の159万503人となり、(略)

 未婚・晩婚化の傾向は変わらず、少子化は政府想定を上回るペースで進む。(略)

 

 

 

2 国の少子化対策・こども家庭庁の取組みについて

①令和6年度当初予算案等が閣議決定されました。こども家庭庁が発足して9か月。予算だけでなく、今後のこども政策に関連する重要事項が政府として正式に決定された。

②こども基本法に基づく我が国初の「こども大綱」、「こども未来戦略」、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」、「こどもの居場所づくりに関する指針」が決定された。

➂「こども大綱」は、多くのこども・若者や子育て当事者から意見をお寄せいただき、作り上げることができた。

④「こども未来戦略」は、少子化は我が国が直面する最大の危機であるとの認識の下、3.6 兆円程度に及ぶ、前例のない規模での政策強化の具体策を盛り込んだ。

 これにより、我が国のこども1人当たりの家族関係支出は16%程度になると見込まれ、OECDトップのスウェーデンの水準に達し、画期的に前進する。

 これらを支える財源は、徹底した歳出改革等によって確保することを原則とし、支援金制度の構築を含め財源の具体的な内訳や金額とともに示す。

⑤令和6年度予算は、令和6年度のこども家庭庁予算は0.5兆円増(+10%)の5.3兆円となり、「こども未来戦略」に基づくこども・子育て政策の抜本的な強化に向け、大きな一歩を踏み出す予算とすることができた。内容面でも、幅広い子育て世帯と子育て支援に携わる現場の方々を支えるものとすることができた。

⑤ー1

 児童手当について、次代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済的支援として、所得制限の撤廃、支給期間の高校生年代までの延長、第3子以降3万円の抜本的拡充を行い、来年12月から支給を開始する。

⑤ー2

 これまで比較的支援が手薄であった妊娠・出産期から0~2歳の子どもに対する支援として、出産・子育て応援交付金による10万円相当の経済的支援に伴走型相談支援を組み合わせて着実に実施する。また、令和5年度補正予算により、こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施に向け、試行的事業に取り組むこととする。

⑤ー3

 4・5歳児の職員配置基準について、令和6年度より、30対1から25対1への改善を図り、それに対応する加算措置を設けます。また、保育士等の処遇改善について、令和5年人事院勧告を踏まえた対応を実施する。この処遇改善により、保育士の給与を5.2%引き上げることが可能となる。

⑤ー4

 こどもの貧困対策・ひとり親家庭の自立促進や、児童虐待防止・社会的養護・ヤングケアラー等支援、障害児支援、医療的ケア児支援等を拡充し、多様な支援ニーズを有するこどもの健やかな育ちを支える

⑤ー5

 上記を含め、「加速化プラン」による充実額は、国・地方の事業費ベースで見て、こども家庭庁で1.1兆円程度、政府全体で1.3兆円程度となり、「加速化プラン」3.6兆円の3割強が実現されたことになる。

⑥こども・子育て政策の強化は、国と地方が車の両輪となって取り組んでいくべきである。

⑦総務省において、「加速化プラン」のうち令和6年度の地方負担分について地方財源を適切に確保するとともに、地方自治体が地域の実情に応じた独自のこども・子育て施策をソフト・ハード両面で実施するために必要な地方財源も確保した。

⑧組織定員関係は、定員は、庁全体で35名の増員となり、令和6年度末定員は465名となる。

 

 

ダウンロード
こども家庭庁予算案等の決定に当たっての加藤大臣メッセージ.pdf
PDFファイル 188.4 KB

 少子化対策の財源確保のための「支援金制度」をめぐり、加藤こども政策担当大臣は11日、国民健康保険に加入する自営業者などが拠出する額の詳しい試算を明らかにしました。2028年度には、年収400万円の人で月額550円になるなどとしています。

(略)2028年度の試算として、

▽年収200万円の人は、加入者1人当たり月額250円

▽400万円の人は550円

▽600万円の人は800円

▽800万円の人は1100円になると明らかにしました。(略)

 

  

 

 過去最少の出生数と少子化が進んでいる中、国は5兆円規模の子育て支援策を講じようとしています。

 

 その財源は国民の社会保険料となっており、子育て世代も負担することとなります。

 

 

 

 

 


Ⅳ 国の取組みの問題点

 

 この政府の取組み関して、関連する各種記事を取り上げました。

 

 

 

1 社会保険料への負担増は適切か?

 

① 少子化対策への社会保険料利用8つの問題点

日本総研 2023年05月23日 西沢和彦

 本稿は、その案にまつわる数多くある問題点を8つに絞り込み整理した。(略)

2. 出生率の引き上げという目的は、社会保険本来の目的である老齢・障害・疾病などリスクの発生への備えではなく、その財源に社会保険料は適さない

(略)

5. 税の代替としての利用の問題点の3つめは、若者の雇用の不安定をはじめとする雇用や経済への悪影響など中立性に顕著な難があることである。

(略)

7. 既に窮状にある社会保険財政を一段と圧迫し、持続可能性を低下させる。

(略)

 

 

 

② 負担増大の社会保険料の現状(ブログ参照)

 

 私のブログで取り上げたものですが、令和6・7年度の後期高齢者医療制度(75歳以上)での保険料は1人あたり年平均8,002円増加します。当然のこと現役世代の負担もしかりです。

 後期高齢者医療制度での保険料の増加は、その保険料等の4割を負担する現役世代の手取り減少を招くなど大きな影響を与えます。子育て世代の手取り減少は、少子高齢化を加速する要因の一つと私は考えています。

 

 

 

2 可処分所得の減少について(上記ブログにも取り上げています。)

 

増えない私たちのお給料、約20年間で男性の平均給与はこんなに下がった!

[小川真由/小川製作所,MONOist] 2022年12月01日

(略)全世代合計の平均給与についてご紹介しました。私たち労働者の平均給与は1997年がピークその後は減少している(略)

 各世代とも1997年までは給与は増加傾向にありましたが、それ以降は減少しています。2009年がボトムラインになって近頃は増加傾向となっていましたが、1997年の水準を超える前に、また減少に転じてしまいました。

 もう少し詳しく変化を見てみましょう。表1が1997年と2020年の平均給与の比較です。

表1:年齢階層別の平均給与(男女合計)
世代 1997年 2020年 変化量
20代 336.4万円 323.2万円 -13.3万円
30代 473.9万円 419.7万円 -54.2万円
40代 529.7万円 485.5万円 -44.2万円
50代 557.9万円 516.1万円 -41.8万円
全年代平均 467.3万円 433.1万円 -34.2万円
 

 ご覧の通りどの世代でも平均給与が減少していて、平均すると年間で約34万2000円もお給料が減っていることになります。特に30代では50万円以上も減少しています。大変ショッキングな結果ではないでしょうか。(略)

 

 

 

衝撃的な試算結果がある。私たちの額面年収がずっと同じだったとしても、実際に使える「手取り収入は激減しているという残酷な数字だ。

 

 下図(左図)を見てほしい。これは、額面年収700万円の人における21年間の手取りを試算し、その推移をグラフ化したものだ。給与や退職金、年金に関する手取りの試算をライフワークとしている、ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵氏が試算した。

 

 このグラフを見ると、額面年収はずっと同じ700万円なのに、手取りは2002年に587万円あったものが、23年には536万円へ激減していることが分かる。

 

 21年間で実に51万円も手取りが減少してしまっているのだ。(略)

 

 一方、手取りが激減してきたのは現役世代だけではない。年金世代も事情は同じなのだ。

 

 下図(右図)を見てほしい。年金収入300万円の人における手取りの推移を示したものだ。現役世代と同じく、前出の深田氏が試算してくれた。

 

 これを見ると、年金世代の場合も24年間で37万円も手取りが減ってしまっていることが分かる。99年に290万円だったものが23年には253万円なので、1割以上も減っている計算だ。

 

 グラフを見ると、社会保険料で差し引かれる金額が激増していることが分かる。(略)

 

 

 

 個人や世帯の収入のうち、自らの裁量で自由に使える「可処分所得」。生活水準の向上や日本経済の活性化にも大きな影響を及ぼすだが、日本では企業の給与水準は低迷しており、可処分所得もほとんど増えていない。(略)

 企業の給与水準が低迷しており、可処分所得の増加とはほど遠い状態にある。それどころか、若者世代を中心に貧困世帯も増えている。(略)

 日本では「子供」の貧困も少なくない。(略)12年時点で3人家族の場合、日本の貧困線は約210万円で、子供の貧困率は16.3%だった。およそ300万人超の子供たちが貧困世帯で暮らしていることになる。そして20年に発表された最新データでは、18年の貧困線は127万円、子どもの貧困率は13.5%となっている。(略)

 

 

 

 3 婚姻数の減少について

 

 晩婚化など起きていない。起きているのは若者が結婚できない状況である

YAHOO JAPAN ニュース 荒川和久 2023/1/16(月) 

(略)2021年の婚姻数は約50万組である。2010年はまだ約70万組もあった。この10年ちょっとの間に28%減である。出生数は2010年約107万人から2021年約81万人で減少率は24%であるから、大騒ぎしている出生減より婚姻数の絶対減の方が深刻なのである。(略)

 結論からいえば、恋愛においては年収は関係ないが、こと結婚となると、望むと望まないとにかかわらず、結果として妻側の経済力上方婚(妻の年収よりや夫の年収が高い状態)になっているのである。(略)

 未婚男性たちが満足のいく年収まで稼ぐように待っていれば、当然の帰結として未婚女性たちの結婚も後ろ倒しになる。(略)そもそも、待ったとしても、未婚男性の側も30歳を超えても年収300万円にすら届かない場合も多く、額面で突破しても可処分所得は25年前より下がっているという現実もある(略)

 このように、男も女も「まだ結婚できる経済力がない」などと遅らせているうちに、気付いたら「もう結婚できる年齢ではない」という時期になり、(略)

 晩婚化ではない。結婚したい時、するべき年齢の時にできないがゆえの、結果としての非婚化なのである。生涯未婚率の急上昇はその表れだ。

 何度でもいうが、少子化は「若者が若者のうちに結婚できなかった結果がゆえの諦婚化」によるものであり、それが婚姻減を発生させ、今、もうどれだけ一人の母親が多産しても追いつかないという少母化になっているのである。(略)

 

 

 

(略)婚活の現場においては、年収いくら以上という足切りがあるとも聞きます。年収別の生涯未婚率を紐解けば、男性の場合は、年収が低ければ低いほど未婚率が高くなるという強い正の相関があることも事実です。(略)

 男性に関しては、見事なほど既婚者と未婚者の違いが明確です。特に男性の40歳以上では1.5倍以上の年収格差があります。(略)

 

 

 

(略)男女の年収別の生涯未婚率(50歳時未婚率)によるものであるが、実際年収が低い男性ほど未婚率は高く、女性は年収が高くなればなるほど未婚率があがるというほどの相関はないが、年収400万円以上になると未婚率が高くなる。400万円という年収を境に男女の未婚率が逆転する(略)

 2022年就業構造基本調査の結果が公開されたので、最新の年収別男女の生涯未婚率をチェックしてみよう。比較のために、2017年の結果も破線で掲出する。

 これをみると、多少の違いはあれ、おおまかな男女の傾向は5年前とさほど変わらない。低年収の男性は未婚率が高く、年収400万円以上の女性は男性より未婚率が高い。女性は年収500万円台の未婚率がややあがっている他は5年前とほぼ変わらないが、男性の場合、特に300万円未満の未婚率の上昇が大きい。低年収の男性がさらに結婚できなくなっているようにも見える。(略)

 この割合の数字だけで「低年収男性の未婚者が多く、高年収の女性の未婚者が多い」と言えるわけではないし、世の中に低年収の未婚男性と400万円以上稼ぐ未婚女性が大勢あふれているわけではない。(略)

 正確に把握するためには、割合と同時に実数も確認しておくことが大事である。(略)実数で見ると、男女ともボリューム層は年収300万円台であることがわかる。(略)

 未婚人口が増大したのは、低年収男性が増えた、高年収女性が増えたというよりは、かつては初婚のメイン年収帯である300万円台という中間層の男女が結婚できなくなった結果であると見た方がいい。(略)

 少子化の真因は、とりわけ男性で目立つ未婚率の上昇と、晩婚化だ。子育て支援策の不足だけではない。男女とも未婚率が増える一方、「再婚」夫婦が婚姻の4分の1を占める。原因を認識し、抜本対策が必要だ。(略)

 下のグラフは合計特殊出生率と完結出生児数の推移だ。完結出生児数とは、結婚後15~19年たった夫婦の平均の子供数である。いわば夫婦の最終的な平均子供出生数だ。

夫婦間では子供は2人近く生まれている
●夫婦間の子供数と合計特殊出生率の推移
夫婦間では子供は2人近く生まれている<br /><small>●夫婦間の子供数と合計特殊出生率の推移</small>
出所:ニッセイ基礎研究所の資料を基に本誌作成

 この完結出生児数は、ほぼ2前後で推移している。つまり結婚して婚姻が継続した夫婦からは、人口を維持できる水準(2.07)に近い子供が生まれているのである。

 ではなぜ、合計特殊出生率が低くなるのか。(略)同出生率の分子になる子供の数はほぼ既婚女性が産んでいることになる。

 ということは少子化に大きく影響しているのは未婚女性の増大、つまり未婚化や晩婚化といえる。ところが、現状は待機児童対策など子育て支援に集中している。(略)未婚化や晩婚化という問題への対策があまりに手薄ではないだろうか。(略)

 男女別生涯未婚率(50歳時点婚歴なし率)の推移である。1990年代以降、特に2000年ごろから急速に高まってきた。特に男性は15年時点で約4人に1人に達している。女性も14%が未婚となっている。(略)

 

 

 

 4 国民負担率と出生数の負の相関について

YAHOO JAPAN ニュース 荒川和久 2023/7/7(金) 

(略)国民負担の「ワニの口」

繰り返しこの連載でも書いている通り、出生数の減少は根本的には婚姻数の減少である。そして、婚姻数の減少は、決して「若者の結婚観の変化」などというものではなく、1990年代以降30年に渡って続いている若者の経済環境の停滞である。

以下に、婚姻数と出生数、それと財務省の出している国民負担率の長期推移の相関を見ると、驚くほど強い負の相関があることがわかる。(略)

 何度もいうように、子育て支援少子化対策別物であるということだ。(略)そもそもの国民一人当たりの収入は底上げしていかないといけないし、分配よりも成長が求められる。分配金の成長ではない。(略)少なくともバラマキをしても、配った金額以上の徴収をしようとしている現在の政府のマヤカシにはNOというべきではないだろうか。

 

 

 

産経新聞 山口 暢彦 2023/8/7

 岸田文雄首相が〝異次元の対策〟で解決しようとしている少子化問題。これにからみ、1970年(度)以降の国のデータを調べると、税金や社会保険料の支払いが所得に占める「国民負担率」が高まるにつれ「結婚・出生数」が減っており、両者の「負の相関」がきわめて強いことが分かった。6月の政府税制調査会の答申などにも〝増税色〟が見え隠れする岸田政権。しかし、国民負担の拡大は少子化を深刻化させる可能性があり、首相は増税路線を封印して、減税も検討すべきだ。(略)

 

 

 


Ⅴ 婚姻数の減少について

 

 上記の記事について婚姻数の減少が取り上げられていましたので、改めて表とグラフを作成してみました。

 

1.全国の婚姻件数と出生数の推移

 上記は「厚生労働省 人口動態調査」の人口動態統計(確定数)の概況の平成24年から令和4年の婚姻数と出生数を抜き出して、表とグラフにしたものです。

 グラフを見れば一目瞭然です。先に記載している記事の指摘の通り、婚姻数と出生数には正の相関が確認できます。いずれも右肩下がりです。

 

 

 

2.摂津市の婚姻件数と出生数の推移

 上記は「令和4年版摂津市統計要覧」の第2章人口動態から、婚姻数と出生数を抜き出して、表とグラフにしたものです。令和元年の「令和婚ブーム」がよく分かります。それを除けば婚姻数出生数ともにほぼ右肩下がりです。また婚姻数の増減の1~2年後に出生数がそれに追いつくような動きをしているのが分かります。

 

 

 

3.明石市の婚姻件数の推移

 上記は「明石市統計書令和5年版(2023年)、令和4年版(2022年)」の人口から婚姻数と出生数を抜き出して表とグラフにしたものです。出生数は横這い状態で、婚姻数は減少しています。令和2年から令和4年にかけて出生数と婚姻数がかけ離れてきていることは、神戸市をはじめ他市から子育て世帯が入っていることを示すものと考えられます。(明石市が極端に大家族が多く、しかも年々増えているとは考えにくいです。)

 子育て支援が魅力となって他市から子育て世代(子育て世帯)が流入し、子どもを産み育てている点は、本市も参考にすべきものですが、やはり子育て支援が充実している明石市も全国や摂津市と同様に婚姻数が減少しています。(平成28・29年の増加の理由は気になりますが。)

 

 子育て世帯のパイが減少しているということです。(子育て世代という表現だけでは、婚姻をしていない方もおられることから、正確には婚姻をした「子育て世帯」が一般的に出生数の鍵となります。)

 

 

 

 婚姻数出生数正の相関を踏まえ、少子化対策として出生数を増やすのであれば、子育て世帯となる婚姻数を増やすことが求められます。明石市の子育て支援策が婚姻数増につながっていない事も踏まえ、繰り返しにはなりますが子育て支援策と少子化対策は別物と考えて良さそうです。

 

 

 

 


Ⅵ 考 察

 

 ⅡやⅢで記載した事、そしてⅣの記事、Ⅴの統計を踏まえ考えたことは、

 

1.地方自治体子育て支援に力を入れています。しかし出生数減少を抑えれていません。(Ⅱ、Ⅳ)

 

2.は多額の予算で、子育て支援策を強化しようとしています。その支援金の財源社会保険料で賄う計画です。(Ⅲ、Ⅳ)

 

3.企業の給与水準は向上していません。それにもかかわらず、社会保険料というステルス増税が増えています。(Ⅳ)

 

4.支援すべき20~30歳代からも徴収し、若者の可処分所得を減らしています。(Ⅳ)

 

5.婚姻数が減少しています。婚姻数の減少と出生数の減少には正の相関があります。(Ⅳ、Ⅴ)

 

6.この婚姻と所得には正の相関があります。300万円台という中間層の男女が結婚できなくなっています。また婚姻と国民負担率には負の相関があります。(Ⅳ)

 

7.結婚して婚姻が継続した夫婦からは、人口を維持できる水準(2.07)に近い子供が生まれています。(Ⅳ)

  

8.少子化の要因未婚率の上昇晩婚化と指摘されています。(Ⅳ、Ⅴ)

 

9.国の施策は子育て支援に厚く、未婚化や晩婚化への施策が手薄です。(Ⅲ、Ⅳ)

 

 

 まとめると、少子化対策には、出生数増につながる婚姻数を増やす事が必要です。

 

 婚姻数を増やすためには、20~30歳の適齢世代の可処分所得を増やす必要があります。

 

 しかし、こども家庭庁の施策は子育て支援に特化しています。

 

 加えて、社会保険料に更なる負担で、国民負担率を上げ、適齢世代の可処分所得を減らしています。

 

 よって、政府・こども家庭庁の施策は逆効果となることが予想されます。

 

 

 

 


Ⅶ まとめ

 

 子育て支援少子化対策別物と考えられます。

 

 各種資料・状況証拠から明らかです。

 

 その視点で見れば、国の少子化対策には大きな疑問が生じます。現状の政策子育て支援の強化策でしかなく、むしろ現役世代の負担増大(国民負担率の上昇)し、婚姻数更に減少し、出生数減少するでしょう。

 

 とてもちぐはぐな対策としか思えません。国の施策は出生数を増やすという目的を達成することは困難でしょう。

 

 残念ながら、少子化対策は市レベルではどうにもなりません。子育て対策はできます。ただ、戦略の失敗戦術では取り戻せません

 

 国レベルで、適齢世代の国民負担率を下げ、可処分所得を上げるための経済的施策(減税も含めて)が真に必要でしょう。少子化対策という点では、少なくともこども家庭庁の予算(5兆円)をそちらに回すのが適切でしょう。

 

 

 

 

 最後に、現状において摂津市としてはどうすべきでしょうか。

 

 市としても努力すべきことはあります。

 

 これまでの質疑にもありますが、摂津市では全国平均より子どもが一人の世帯が多いという結果※があり、子ども一人の世帯に、二人目、三人目を産んでもらえる、そう決断してもらえるような豊かな子育て環境の構築をしっかりと行うことです。

  子育て支援については明石市の取組み・メリット・デメリットをしっかりと参考にしなければなりません。素晴らしい先進事例です。

 ただ、子ども一人の世帯が全国的にも増えています。それもまた結局のところ可処分所得の減少という問題に繋がってこようかと思います。つまりは経済的支援が求められるのが実情ではないでしょうか。なお多子世代の支援としては「ハンガリーの少子化対策」が有名です。

※摂津市議会 文教上下水道常任委員会記録 令和5年10月20日 より

 

 また、市民の方から指摘ありましたが、「結婚は自由を失う。」、「子育てが大変だ。」、「教育費がかかる.。」、というような結婚子育てに関してネガティブな風潮がマスコミをはじめ様々な媒体で作られているというものです。

 その上で、「結婚いいよ!」「子供可愛いよ!大変やけど楽しいよ!」とプラスの方の意見をもっともっともっと発信すべきとのご意見を頂いています。これにも取り組まなければなりません。

 

 

 議会で引き続き提言して参ります。

 

 

 

 

 

(ぼやき)

 、、、、、、コロナワクチン太陽光発電・メガソーラー負担上昇の社会保険料そして真逆の少子化対策、移民推進政策と政府の施策は、おかしなことばかり。陰謀論と指摘されるような事が現実に起きている、と疑問視してしまうのではないか、と考えてしまうほど、残念ですね。

 

 

 

 


Ⅷ 関連資料