Ⅰ はじめに
本市の児童生徒の学力の課題として、国語力の低さが挙げられます。
国語力は言語力でもあり、生きる力の根幹です。生きる力を育むことを掲げている本市として、その強化は必要不可欠です。
加えて、スマートフォンの普及が低年齢化しており、スマホ依存の傾向が高まっていると感じています。この事は、国語力強化への大きな障壁となるものと考えています。
現場の状況も確認し、改めて児童生徒の国語力等の向上について、教育委員会の担当部署と意見交換を行っています。
国語力をどう向上すべきか、スマホ依存をどう克服すべきか、まとめました。
Ⅱ 摂津市の現状 児童・生徒の国語力等の課題
摂津市の小中学校の国語力については教育委員会の資料のR4年度全国学力・学習状況調査やチャレンジテストなどから科目「国語」について確認したところ以下の通りとなります。
1.小学校は全国平均をR4年に超えた。
2.中学校は全国平均を超えたことが無い。
3.R4中学チャレンジテストでは国語が英語ともに低下。
4.(その他)学校・地域によって学力に差が生じている。(聞き取り等)
また、国語力には読む力は欠かせません。その指標として読書活動が挙げられます。それについても確認しました。
教育委員会の資料のR4年度全国学力・学習状況調査(2022年)と推移の確認としてH26年度の全国学力・学習状況調査(2014年)から読書時間について以下の通りとなります。
◎対象:小学6年生
・R4年度の読書を全くしない割合は4割超。
・R4年度の読書時間30分以上の割合は3割に満たず。
・H26年度の読書を全くしない割合は約3割。
・H26年度の読書時間30分以上の割合は3割超。
◎対象:中学3年生
・R4年度の読書を全くしない割合は4割半以上。
・R4年度の読書時間30分以上の割合は2割半。
・H26年度の読書を全くしない割合は4割半。
・H26年度の読書時間30分以上の割合は2割半超。
R4年の小学6年生、中学3年生はともにH26年(2014年)に比して読書をしない割合が増えています。また全国に比しても読書をしない児童生徒が多い現状が確認できます。(全国でもR4年はH26年に比して読書をしない児童生徒が増えています。)
上記を踏まえて、本市の児童生徒の国語力並びに読書活動は全国と比して低い状況であり、その対策が必要であることが分かります。
Ⅲ 国語力の重要性について
改めて、国語の重要性とはどのようなものでしょうか。どう教育委員会は認識しているのでしょうか?
それに関しては議会で国語の重要性について質疑しています。これを一読してもらえれば一定理解して頂けるものと考えます。
その内容は以下の通りです。
摂津市議会 文教上下水道常任委員会記録(令和6年3月8日)
(委員会質疑で関係事項を抜粋・箇条書き)
○松本暁彦委員
①チャレンジテストも学習状況調査を見ても、国語が一度も全国平均を上回っていない状況である。(中学校に関して)
②摂津市としては生きる力を育むということで、最も必要なのは、国語である。
➂一般的に、国語力、例えば就職試験でもエントリーシートの書き方、面接でも、問われるのは、国語であって、国語力によって生涯年収の差がつくと思っている。
④バイリンガルの方は、よく英語脳があるとお聞きするが、一般的な人は、英語を聞いて、頭の中で国語に変換して、そしてまた国語から英語に変換して口に出すという手法で、国語力を培っていないと、英語でのコミュニケーションもできない。(できる方もいるかもしれません。)
⑤生きる力において、国語力を高めることが優先的に高い。
⑥教育支援活動も、ぜひ力を入れていただきたい。
⑦生きる力の中で、国語力をどう位置付けているのか、令和6年度、国語力は全国平均を上回るんだという意気込みを聞かせていただきたい。
【国語力の向上に対する意気込みについて答弁】
○河平教育総務部副理事
①国語について、対話力や読解力、語彙力、思考力もそうだが、様々な力を育むことにつながって、全ての教科の基礎となるものと考える。
②その内容は、学習指導要領の中にも言語活動の充実ということで示されており、言語というものは国語そのものである。
➂本市においても、小学校でも多くの学校が国語の研究に取り組み、研究授業や研究発表等を行っている。
④令和4年度までに、国事業の「学力向上のための基盤づくりに関する調査研究事業」を受け、その中でも、魅力ある言語活動の充実について取り組んできた。
⑤その取組の内容については、読解力向上を目的に取り組み、各学校に普及を努めてきた。
⑥中学校においても、教科の特性はいろいろあるが、全ての学びの基礎となるのは国語になり、国語力を高めていくことは重要である。
⑦教育委員会として、これまで小学校で学んできたことなどを、中学校でも積み重ねていくことで、小・中学校が連携して、国語力を中心とした学力向上に取り組んでいきたい。
⑧そのようなことを通して、子供たちがこの社会を生き抜く力が育めるように取り組んでまいりたい。
○安田教育総務部長
①東京都世田谷区で、教科「日本語」の授業を拝見した。そこで、子供たちが日本語に親しみ、国語についてしっかり考え、また、話すことに取り組んでいる姿を拝見した。
②国語・勉強だけでなく、話す力、コミュニケーション力も大事。
➂これからの生きる力の基本となってくるので、我々教育委員会としても、しっかりと取り組んでいきたい。
【教育委員会への要望】
○松本暁彦委員
①やはり、国語力。
②読解力がなければ、数学でも文章問題を解けない、理解についてもしかり。
➂そこについては、もっともっと、力を入れていただきたい。教育支援課としても、検討していただきたい。
④全国平均から、チャレンジ・全国学習状況調査でも、国語力が低いのは、一番の問題。
⑤新聞で読解力を鍛えるとか、様々な手法を通じて、国語力を高めていただきたい。
⑥それで、全国平均を突破していただきたい。
(以上)
上記を踏まえて、国語は言語そのものであり、学びの基礎そのものです。
よって国語力の強化は極めて重要だといえるでしょう。
Ⅳ 国語強化の一般論
国語力の重要性について述べましたが、どう国語力を強化すべきなのでしょうか。
インターネットで掲載されている中で気になった4つのサイトを選び、一般的にどのような手法があるのか抜粋しました。
内容は下記の通りです。
1.国語とは
①全ての勉強の基本は「国語力」にある。※2
ここでの国語力は、インプットの読解力とアウトプットの表現力。
特に「読解力」はすべての勉強における最重要要素である。
②国語は考える土台、共感の土台を形成する。※3
国語力の限界が、思考の限界なのである。
2.国語力の向上に何が必要か?(資料※1~4から抜粋)
① 日常生活の中で「多様な語彙」を使う。※1
読解力が欠如している大きな原因は「語彙不足」だ。
② 音読をする。※1
国語で大切なのは、長い文章をたくさん読むこと
➂ 正しい日本語を書き写す※1
正しい日本語を書ける大人に育ってもらうために、正しい文章をひたすら書き写す学習。
④ 丁寧に読む。※2(本や教科書を読み続ける。)
⑤ 国語力を分析するために、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4行動で分析※2
⑥ 低学年では語彙、高学年では文章全体に焦点を※3
・国語力をつけるためには、ただ読書をすれば良いわけではない。
・教材文を通して、文章の読み方や書き方を学習するのが国語の授業である。
(語彙力の少なさは高学年・中学生になって読解力へ影響が大きくなる。)
⑦ 先生による指導力の差※3
国語は小学校においても最も重要な教科でありながら、指導力の差が最も顕著になる教科なのだと思う。
(摂津市でも若い先生が近年多い。)
⑧ 活字を追う「体力」を養う※4
読む体力を養うには読書が最適。週に1回などタイミングを見て感想を伝えあうと楽しく続けられる。
⑨ 知らない言葉を調べる。※4(語彙力を高める)
インターネットや紙の辞書で調べる。(紙が記憶に残るのでお勧め)
⑩ 小学校中学年~中学生は「読む・書く」の反復練習へ※4
問題集や作文、要約問題等(読書感想文も効果的)
⑪ 日々のコミュニケーションを大切にする。※4
コミュニケーションは「話す・聞く」の力が大きく発揮される場面。
※1 「国語力が伸びる子」の家で実践しているシンプルな3つの習慣
DIAMONDオンライン 書籍オンライン編集部 2023.12.22
※2 勉強の基本は国語力がすべて。高めるコツはたったひとつ「丁寧に読む」こと
STUDY HACKER 公開日 2020-06-23 最終更新日 2023-09-08
※3 国語教育で何を学ぶのか
noto Kyoko Saito:地域と教育を考える 2020年10月5日
※4 国語力って何?大人にも重要な国語力を子どものうちに伸ばす勉強法4選
ベネッセ教育情報 2021/08/081
Ⅴ 現場の状況
一般的な国語力の強化の手法等を先ほど記載しましたが、本市の現場の状況はどうでしょうか。
改めて市内の幾つかの小中学校の校長先生と意見交換を行い、現状等を確認しました。意見として上がった一部を列挙します。
内容は下記の通りです。
【中学校】
① 中学生でも語彙力の差がある。(明らかなに語彙力が少ない生徒がいる。)
② 語彙力は感情を表現化する能力にも繋がる。表現できずコミュニケーションが取れず問題行動をとる生徒がいる。
➂ 読解力(リーディングスキル)が足りない生徒がいる。リーディングスキルを向上させる取組みがある。
相馬市が取組むリーディングスキルテストである。
④ スマホでSNSやYouTube等を見て読書しない生徒が多い。漫画もネットで見ている。
今更、本を読めと言っても難しい現状がある。
⑤ グループワークなどコミュニケーション力も鍛える授業内容を意識している。
⑥ 小学校の低学年への教育活動支援員は有効である。(個々に寄り添った指導ができる為)
中学生は小学生の延長上であり、小学校の取組みが大切であるとのこと。
【小学校】
① 問題行動を起こす児童がいる。家庭環境に拠るところが大きい。
② なぜ国語力が必要なのか。若い教員が増えるにつれその意識が薄れている。
改めて国語の重要性を認識させる必要があるのではないか。
③ 学力向上プランとして、国語の授業づくりに今年度力を入れる。
④ 国語の授業がテクニックになっており、児童が国語を楽しめていない。
⑤ 絵本の読み聞かせは大切である。
⑥ 朝読書を再開した。
⑦ 児童は図書室に行かないため、学級前に本を置く工夫をしている。
⑧ 話し方やコミュニケーションの取り方について、教員の研修に入れて良いのではないか。
⑨ コグトレを全学年で実施している。昨年からオンラインを活用
⑩ 私的な勉強会等も通じて話す・聞く力を強化する授業を行っている。
【共通】
① 授業中、タブレット端末で暇つぶしや他の事をする等、集中力に欠ける子どもが見られる。
② 児童生徒の学力と家庭環境の関係性は強い。
全てではありませんがざっくりと以上になります。
上記の内容を踏まえて、対策を講じなければなりません。
Ⅵ スマホ依存対策の必要性
現場の状況を確認する中で、気になったのが児童生徒のスマホ依存に関連する話です。
私自身、昨年の令和5年11月15日の大阪府市議会議長会が主催する議員研修会で、『脳を知り、脳を育み、脳を鍛える』をテーマにした東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏の講演を聞き、スマホ依存・電子機器利用の教育の課題を認識していたこともあって、大変気になっています。
改めてスマホ依存や電子機器での教育の課題について列挙します。
1.スマホ脳
アンデシュ・ハンセン/著 、久山葉子/訳(新潮社)
世界的ベストセラー上陸! スティーブ・ジョブズはわが子になぜiPadを触らせなかったのか?
最新研究が示す恐るべき真実。
平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ。だがスティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。なぜか? 睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存――最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳が確実に蝕まれていく現実だ。
2.「オンライン」が脳に与える知られざるダメージ情報伝達はできても「感情の共感」は難しい
東洋経済オンライン 川島 隆太 : 東北大学加齢医学研究所 所長 2022/08/18
新型コロナウイルスの蔓延により、リモートでの会議や授業が行われるようになり、大人も子どももオンラインを使用したコミュニケーションの機会が多くなりました。
東北大学の川島隆太教授は、独自の実験結果をもとに、オンラインは「脳の発達不全」「集中力低下」「学力低下」など脳へのダメージを招くと警鐘を鳴らしています。オンラインに潜む危険を、川島教授の著書『オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題』から一部抜粋・再編集して解説します。(略)
3. 中学入学時にスマホを買い与えると脳の発達が小6で止まる…スマホを毎日使う子を3年間追った衝撃の結果 小6と同じ能力のまま高校受験をしなければならなくなる
PRESIDENT Online 川島隆太 東北大学加齢医学研究所教授、榊 浩平 東北大学加齢医学研究所助教 2023/05/30
スマホを使い続けると、成長期の脳はどうなるのか。小中学生がスマホを使うことの影響を調べてきた榊浩平さんは「インターネットを毎日使っている子どもたちは、3年間で脳が全く発達していなかった。例えば、中学入学時にスマホを使い始めると、中学3年時点で小学6年と同じ能力のまま高校受験をしなければならなくなる」という――。(略)
4.紙の本と手書きに回帰するスウェーデンの学校 学力低下を懸念
NewSphere 2023/10/4
(略)スウェーデン国内各地の学校には休暇を終えた生徒たちが戻ってきた。教師の多くは、印刷された書籍や静かな読書時間、文字を書く練習に新たな重点を置き、タブレットを使う時間や生徒が独自に行うオンライン検索、キーボードの入力練習に充てる時間を削っている。
スウェーデンは保育園へタブレットを導入するなど国を挙げて教育の超デジタル化を推進してきた。そのアプローチが基礎学力の低下を招いているのではないかと政治家や専門家は問題視。それを受けて従来の学習方法を取り戻すという方針となった。(略)
心の健康を保つためには、なにに注意するべきか。スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「スマホを触る時間はコントロールするべきだ。特にSNSを長時間見ると、私たちの脳は強いストレスを感じやすい」という。(略)
6.生成AI「答えはすぐにわかるが頭に何も残らない」、思考力に悪影響懸念…回答丸写しの例も
読売新聞オンライン 2023/07/05 08:08 ChatGPT
文部科学省が公表した小中高校向けの生成AI(人工知能)の指針は、活用例を挙げる一方、リスクや留意点を数多く指摘する内容となった。利用を限定的に始めるとしたが、すでに試行を始めた一部の学校では不適切な使用例も報告されている。専門家は「安易な使い方をすれば、子どもの思考力に悪影響をもたらしかねない」と訴える。
7.「スマホ子育て」は今すぐやめるべき…脳科学者が「スマホにはあきらかな毒性がある」と警告する理由 子供の感情障害にスマホ使用が深くかかわっている
PRESIDENT Online 川島 隆太 東北大学加齢医学研究所教授 2023/05/13
スマホを見ながらの子育ては子供にどのような影響を与えるのか。東北大学の川島隆太教授は「親がスマホの画面ばかりに目を向け、子供と目線が合わないと子供は不安を覚える。その結果、イライラや抑うつなどの感情障害を引き起こす」という――。(略)近年小・中学校の児童生徒のなかに、自分の感情をうまく表現できず、他人の感情もうまく理解できないという子どもたちが急増しているのです。(略)
8.スマホ育児はコミュ力に悪影響? 最新研究「共感性の危険」とは?
東京女子大・橋元良明教授「スマホ育児」の是非 #1~スマホ育児の危険性~
コクリコ 社会心理学者・東京女子大学教授:橋元 良明 2022.01.06
(略)赤ちゃんの頃からスマホを見せられた子どもたちは、その手軽な楽しさを覚え、そこで親の介入がない場合は制御がきかなくなり「スマホ依存」となってしまう危険性があると橋元教授は続けます。(略)
シェリー・タークルという心理学者(マサチューセッツ工科大学科学技術社会論の教授)の研究で、直接的な親子のふれあいや、目と目を合わせて話すことが少ないまま育てられると、10歳以降あたりで共感性に乏しい子どもになりがちだということが明らかにされています。
共感性は、相手にちゃんと視点を移して『自分があの人だったら?』と考えることで養われていくもの。人と話す際に視線がスマホだと、当然相手の目を見ることはない。それが常態化している子どもは、共感性を獲得する機会をスマホに奪われているといえます」(橋元教授)(略)
スマホの保有は世代で大きな差、ネットは60代まで高い利用率
・スマートフォンの保有率:79.7%
13~59歳は90%以上の保有率でした。また、20~49歳では100%以上で、1人1台以上保有していることがうかがえます。60代も約8割の人が保有しています。(略)
(6~12歳:45.3%)
上記1~6などを踏まえ、スマホの長期使用は、脳の発達に悪影響を及ぼし、加えて、調べもの、情報収集、文章作成、コミュニケーションとあるゆる全てがスマホ等の電子機器媒体に依存してしまうと、特に成長段階の子ども達がそのような環境の虜になると、思考力の無い人間に成長してしまうのではないかと懸念されています。
そして上記7~9などを踏まえると、その懸念は顕在化してきているのではないかと考えます。6~12歳ですらスマホ保有率は45%です。スマホ所持の低年齢化が分かるものです。私が携帯(ガラケー)を初めて所持したのが高校生ですから、その環境の変化は驚くべきものです。
そしてスマホ(SNS)を介したいじめや事件も多々発生しています。
小さい頃から、親のスマホを使用したり、所持することにより、いわゆるスマホ依存となる可能性は高まります。スマホに脳がハイジャックされるという表現もあります。既に一部の子ども達のコミュニケーション力の低さや学力の悪影響となっているのではないでしょうか。学校現場等から感じるところです。
そして、この事は学力格差を増長するものと考えています。
スマホに対してジョブズ氏のように正しい理解をして対策できる家庭と、そうでない家庭での子ども達のスマホ依存度は当然のこと差がつくことでしょう。それはやはり成績にも影響することは上記から明らかです。その結果、将来における進学や就職などに影響し貧富の格差へと繋がっていく、そうなることを危惧しています。
文部科学省のGIGAスクール構想の推進で、本市でもコロナ禍において、タブレット端末の児童生徒への配布と学校でのWiFi設備が整えられています。
これ自体は休校期間等での教育を継続し、教育の保障をオンライン授業で行ったことは評価しています。詳細はブログ「公立小学校の臨時オンライン授業について(2022.2)」を参照下さい。
しかしながら、この事が必ずしも学力向上に繋がったとは現場からは聞かれず、分析・評価が不十分です。むしろ今では、授業中における集中力を阻害している状況も散見されています。
そして家ではスマホ、学校ではタブレット端末と、一日中子ども達が電子機器漬けとなってしまう可能性があります。
タブレット端末の利便性は理解できるがゆえにタブレット端末は諸刃の剣といえるでしょう。大切なのはこのデメリットもしっかりと理解したうえで使用することです。
ただ、この事を教職員方々はどれだけ理解しているのでしょうか。理解して使用するのと、理解せず使用するのとではその教育成果は雲泥の差となるでしょう。
繰り返しになりますが電子機器媒体の使用には注意が必要であり、アフターコロナにおいて教育委員会には適正なタブレット端末の使用と教職員・児童生徒へのスマホ依存対策に関する研修を行うよう求めています。
なおこの問題は摂津市だけでなく、全国的な問題です。
Ⅶ 考察
Ⅲ~Ⅵを踏まえて、考察しまとめました。
1.国語力は言語力であり、学ぶための基礎である。
2.国語力の強化として、読む力(読解力)、聞く力、書く力、話す力が重要である。
3.教科における国語力向上の以前の問題として、年齢相応の言語力(語彙力)が不足している子どもがいる。
4.言語力の低さは表現力に影響し、コミュニケーション力にも影響する。
5.スマホ依存傾向の児童生徒がいる。
スマホ依存は、コミュニケーション力の低下や読書時間の減少に関係する。ひいては学力に影響する。
6.上記3~5では家庭環境の影響が大きい。
7.家庭学習にも問題。親がスマホ依存であれば、子どもも然りである。
家庭へその対応をアプローチしつつ、学校でもカバー出来るところは行うべき。
8.地域、学校、個々の児童生徒、それぞれの状況にあった施策も必要である。
9.若い教員・講師が多いため、国語への重要性の認識と研修が必要。
10.相馬市の読解力(リーディングスキル)を向上する取組みは有効ではないか。
11.タブレット端末は諸刃の剣として慎重かつ適切な使用を教員が認識する必要有
12.学習サポーターの学校の特性に応じた人数の配置が必要。
13.幼少期から読書に親しむことが重要。
・スマホ依存対策としても重要
・読書をしない児童生徒が増加している。
14. 就学前教育は重要
上記13に関連して。(スマホ依存対策含む)
Ⅷ 今後の議会での提言について
「Ⅶ 考察」を踏まえて、具体的に市や教育委員会へ議会にて提言すべき内容・方向性を検討しました。国語力の強化を目的として、概ね1~5つの内容となります。
1.読む力・読解力等の強化
① 読書推進計画改訂に向けた提言
・ 子育て世帯へ読書手帳の発行
・ 学校での朝読書や読書時間設定の徹底
・ 読書感想文の実施の徹底(書く力)
② 読書活動推進条例の制定
・ 学校での読書時間の設定等の働きかけ強化
・ 市全体での取組み、幼少期から大人まで家庭や地域を巻き込む。
➂ 学校におけるリーディングスキルテストの導入等での読解力向上
汎用的な読解力の強化は有効(特に国語の点数が低い学校等)
④ 就学前教育の更なる推進
語彙力向上の取組みを強化
2.教員等の国語指導力の強化
① 教育委員会として国語の重要性を改めて学校等へPRする。
② 国語の授業に携わる教師の研修を増やす等で、授業の更なる質の向上を図る。
特に重要なものは夏休み等に集中させる。
3.学校でのコミュニケーションの強化
① 授業・体験活動・行事など様々な学校生活の中で、コミュニケーションを行う機会を増やす。
② 教員への研修でグループワーク授業の質の向上を図る。
4.児童生徒の個々の学ぶ力の強化
① コグトレの実施。
特にしんどい学校等へ。(学校の特性に応じた教育委員会からの支援)
② 個々の能力に応じた指導(学習サポーター等)
5 スマホ依存への対応
① 教員へのスマホ依存対策に関する研修
・ タブレット端末等の電子媒体を使用した際の脳の働きを踏まえた授業等が必要
・ 教員から児童生徒へスマホ依存の危険性を伝える。合わせて家庭へも。
② 児童・生徒がスマホ依存のリスクを認識し、対策を自分たちが考える事が必要
➂ スマホ使用時間等の実態調査も必要
これらについては、教育委員会担当部署と意見交換を行っております。できること、できないこともありますが、国語力の強化という方向性は同じであり、一定理解を得ています。
既に実行中のものもあれば、見通しなく議会質疑が必須なものなど様々ですが、いずれも実現していけるよう取り組むことが求められます。
Ⅸ 読書活動推進条例の制定へ
「Ⅷ 今後の議会での提言について」にて読書活動推進条例の制定を上げました。
その内容について、以下の通りです。
【摂津市での読書活動推進条例の必要性について】
1.国語力には、読む力が必要
2.摂津市の読書活動は横ばい。
読書活動推進計画には良い取組みが記載されているものの、小学生では読書を全くしない児童が増加する等、結果として読書活動が停滞している。全国平均からも少ない現状。この現状を踏まえ、更なる啓発活動が必要。
3.条例制定は市としての読書の重要性をしっかりと市民にPRすることができる。
4.読書は幼少期からの取組みが必要であり、そのためには親の協力が必要。
5.市全体で取り組む必要がある。
6.スマホ依存への対応も必要。
7.啓発活動とより実効性あるものとして、読書活動推進条例が必要
【他市事例】
① 「読書の町矢祭」を宣言
② 家庭における取組みを明記
➂ 学校等における取組みを明記
④ 地域における取組みを明記
⑤ 毎月第3日曜日を「矢祭読書の日」を定める。
⑥ 読書推進月間を10月に定める。
① 「読書を愛するまち・あらかわ」宣言を行った。
② 区民等の役割を明記
➂ 事業者の役割を明記
④ 幼稚園、保育所等における取組みを明記
⑤ 学校等における取組みを明記
⑥ 図書館等における取組みを明記
⑦ 障害等を有する区民等への支援を明記
⑧ 読書推進月間を11月に定める。
Ⅹ まとめ
国語力(言語力)の向上への重要性は、生きる力の骨幹です。その強化は本市の大きな課題であり、見出した方向性に向けて、しっかりと取り組んでいかなければなりません。
しかしながら現場の声を聞く中で、スマホ依存が大きな問題として立ちふさがってきました。これは無視できるものではありません。
私自身、ついついSNS等に何時間も費やしてしまうことがあり、よく時間を無駄にしてしまったと後悔しているものです。一定理解をしていると思われる大人ですら、そうなのですから、その事を知らない子ども達が瞬く間にスマホの虜になることは言うまでもありません。スマホに脳がハイジャックされるということです。
その結果は脳の発達が止まったり、読書活動、自主学習、家庭でのコミュニケーションなどの成長に必要な大切な機会を損なってしまいます。
家庭でしっかりと対処できているところは良いのですが、しんどい家庭ほど子育てにおいてスマホに頼りがちとなっている現状が見えており、更なる学力格差を招いています。
普段はスマホで色々なことができていたとしても、スマホは浅い表面上のことしか繕えません。例えば市役所の就職試験の際にエントリーシートを生成AIで作成しても、面接でコミュニケーション力や思考の深さなどが計られれば、襤褸が剥がれます。むしろ今後は生成AI使用なども考慮された就職試験になるかもしれません。
人間力といいますか、生きる力がより一層問われる時代となっていくでしょう。
国語力(言語力)の高い人間を育成することは、コミュニケーション力の高さにも繋がり、当人のより良い将来とより良い社会を築くために必要不可欠です。引き続き、摂津市においてしっかりと取組みができるよう議会にて提言して参ります。
Ⅺ 関連リンク